「デート中? お邪魔だったわね」
 萌々香は顔をひきつらせてから、近くにいた恵武の手を取る。
「そうなんです、この子とデート中で」
「違うよ、若様とデート中なんだよ」
 恵武は見事に否定して手を離した。
 それだけならまだしも。
「二人はけっこんするんだよ」
 恵武の爆弾発言に、萌々香は口を大きくあけた。
「そうなの?」
 おばさんが聞き返す。
「違います!」
「しないのか? するんだろう?」
 男性は驚いたように聞き返す。
「なんで!?」
 どうして尊琉がそう言うのかわからない。
「あらまあ、お幸せにね」
 くすくす笑っておばさんは自転車をこいで立ち去った。
「違うんですぅ……」
 萌々香の声は、もうおばさんには届かない。