「えー」
「駄菓子屋さんならあっちにあるけど」
 つい萌々香は口を挟んでしまった。
「行く!」
 余計なことを、と尊琉の目が萌々香を睨む。
 萌々香は目をそらした。
「買うだけ、食べないから。いいでしょ?」
「ちょっとだけだぞ」
 尊琉はそう言って立ち上がった。
「けっこう甘いのね」
「誰のせいだ」
 萌々香はまた目をそらしたが、ふふ、と笑いがこぼれる。
「笑うなよ」
 不服そうに尊琉は呟いた。その様子がおかしくてまた笑うと、つられたように尊琉が苦笑した。
 駄菓子屋はそこからほど近くにある。
 洗いざらした紺色ののれんがかかっており、竹で編んだ大きな四角いかごにお菓子が並べられている。
 店内が狭いので萌々香は店内に入らずに外で待つことにしたが、尊琉も萌々香の隣に立って待っていた。
「あら、萌々香ちゃん、久しぶり」
 通りがかったおばさんが自転車を止めて萌々香に声をかけ、隣の青年に目を止める。