「君はなにを飲む?」
「私はいいです」
「そうか」
 彼は男の子の隣に座り、おまんじゅうを頬張る彼を見守る。
 さきほどの威圧とは違って優しいまなざしで、年の離れた弟を見守る兄のようだった。
 そんな顔もできるんだ。
 意外に思いながら、萌々香は男の子をはさんでベンチに座った。
「ご兄弟ですか?」
「違うよ。僕は若様のお目付け役なんだ」
 男の子が答える。
 若様にお目付け役。そういうごっこ遊びだろうか。
 兄弟ではないなら親子だろうか。だが、彼が父親なら妙に若い気がする。
「お目付け役って大変なんじゃない?」
 萌々香は男の子に話を合わせた。
「そうなんだよ。若様、すぐにいなくなっちゃうんだもん」
「それはお前だろう」
 青年があきれたように言うから、萌々香はくすっと笑った。
 男性はきまり悪そうに男の子の頭を撫でた。