美穂は男性と萌々香を見比べて、にやっと笑った。
「二人で散歩でも行ったら」

「そんなわけにはいかないよ」
「それはいいかもしれないな」
 美穂の言葉に、萌々香と男性が同時に答えた。

「ダメよ、かぼちゃまんじゅう、今日中に売り切らないといけないんだから」
 父がはりきって大量に作ってしまったから、店頭に山盛りに積まれている。

「ならば全部私が買おう。それでいいな?」
「夕方に来た人が買えなくなっちゃうじゃないですか」
 とっさに反論する。

「だったら店を閉めるころに来て残りを全部買おう」
「そんな無茶苦茶な……」

「ここではゆっくり話もできない」
 男性はちらりと美穂を見る。彼女は心得たり、という顔でうなずいた。

「萌々香、商店街を案内してあげなよ」
「いいな、それは。こういうところには来たことがないんだ」
「だけど……」

「商店街に新しいお客さんを呼び込むチャンスだよ。っていうか、これが出会いってやつじゃない?」
 美穂はひそひそと耳打ちする。