「綺麗だな」
 男性の言葉に、萌々香は当たりを見回す。

 商店街のとってつけたようなハロウィンの飾りがあるだけだ。
 隣の八百屋にも萌々香のいる店にもかぼちゃのイラストの入った商店街のポスターが貼られ、百円均一で買ってきたハロウィンの飾りがある。

「君のことだ」
 男性に言われて、萌々香の頬がかっと熱くなる。

「ありがとうございます」
 きっとお世辞にちがいないのに、胸がまたどぎまぎした。

「ちょうど会えてよかった。昨日の返事をもらいにきたのだが」
「なんのことでしょう」
 男の鋭い目線に、思わず顔を逸らした。

「まさか覚えていないとは言うまいな」
 男性の声に、まったく心当たりがない萌々香は首をすくめる。

「どうしたの、萌々香」
 隣から来た美穂が萌々香にそっとたずねる。

「よくわからない」
 戸惑いながら答える。

 美穂は男性と萌々香を見比べて、にやっと笑った。