「心強いな」
 青年が笑い混じり言うと、男の子はぷうっと頬をふくらませた。

 男の子の家は先祖代々、青年の家に仕えている。だからなのか、少年もまた青年に仕えるのだと六歳にして意気込んでいる。

 男の子は気を取り直して言った。
「若様がおばばのお告げを気にするとは思いませんでした」
「気にしているわけではないのだが……妙な胸騒ぎがしてね」

 男の子がおばばと呼ぶ女性は一族の相談役とされている老齢の人物で、たびたび予言をしてそれを当ててきた。彼女の神通力の高さは折り紙つきだ。一族の長も、次代の長である青年もおばばには頭が上がらない。

 その彼女が、工場用地の視察に行く直前に彼に告げたのだ。
「このたびの視察で運命に出会うだろう」

 それ以上を言わなかったので、なにが起こるのかは予想ができない。
 さらに、この少年を連れて行くようにとおばばは言った。彼がどのように予言に関わるのか、彼女はなにも言わなかった。

 予言が悪いものであるなら排除のために対策をとるが、今回はそうではないのでなにもしていない。

 彼の一族には特別な力がある。
 次代の長である彼にも当然、力があり、一族最強とも言われている。が、おばばのそれとは種類が違い、予言の力はない。