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午後になると雨はあがり、客足が戻りつつあった。
八百屋には順調に客が増え、美穂は忙しく接客している。
「ハロウィンにぴったりのかぼちゃまんじゅうはいかがですかあっ」
萌々香は大きな声で待ちゆく人に呼びかける。
和菓子職人の父がかぼちゃまんじゅうを作ったが、やはりハロウィンに和菓子はなじまないらしく、買っていく人は少ない。
この仮装がむしろダメなんじゃないの?
呼びかけながら、萌々香はそう思う。
「いらっしゃいませー」
必死に愛想笑いを浮かべて声をかける。が、通りがかった客は目をそらして足早に通り過ぎる。
ほら、誰も目を合わせようとしない。
商店街に来る客の全員が知り合いなわけではない。こんな大袈裟な仮装をした店員から逃げようとする人がいてもなんの不思議もなかった。
萌々香が疲れて肩を落としたときだった。
「こんにちは!」
幼い男の子が萌々香に声をかけてきた。
長袖トレーナーにデニムパンツをはいていて、満面の笑顔がはつらつとしている。