「ほら、笑顔! 今日いい出会いがあるかもしれないでしょ!」
「あるわけないよ」
 萌々香はがっくりとうなだれる。

 平日の商店街。訪れるのは買い物の女性がほとんどで、たまに老人男性が散歩をしているくらいだ。

「それにしてもすごい気合入った衣装よね。おばさんの手作り? 昔からすごかったもんね。天女? 和菓子店さんにぴったりじゃない?」
「そうかなあ」

「ただ、こんなことして商店街が盛り上がるのかって問われると謎だよねー。いくらハロウィン当日だからって言ってもさびれた商店街じゃねえ」
 ハロウィンイベントとはいってもくじ引きをやっているくらいで、仮想大会など人が集まるようなことを積極的にやっているわけではない。

「近くになんかの工場ができるらしいじゃん? 少しはお客さん増えるかもね」
 萌々香が言うと、美穂は「だといいなあ」とつぶやいた。

 生まれ育った商店街がこのまま消滅してしまうのはなんだかさみしい。
 だからこそこうして手伝っているのだ。

 ぱらぱらとやってくるお客さんは高確率で知り合いだった。
 子供のころからお店の手伝いをしているからだ。それは美穂も同様だ。