「あははは、萌々香、なにそのかっこう!」
 けたけたと美穂は笑う。

「あんただって。八百屋の娘がチャイナドレスってどういうコンセプトよ」
「せっかくだから買ってもらったの。こんな機会でもないと着ることないじゃん。どう、似合う?」
 美穂はモデルさながらにくるりと一周してみせた。

「似合うよ」
 真っ赤なチャイナドレスで、美穂のスタイルの良さが際立っていた。丈はロングだが、深いスリットが入っていてちらりとのぞく太腿がなまめかしい。髪はよくあるイメージに合わせて左右にわけてまとめられている。メイクも中国風に施されていた。

「でも学校の人に見られたらって思わない?」
「どうせ来ないわよ。こんなもん楽しんだもの勝ちよ!」
 美穂は屈託なく笑った。

 萌々香には美穂の前向きさが眩しい。
「強いなー」
「商店街の娘に生まれた宿命よ。そんなに嫌なら、嫁にでも行けばやらずに済むんじゃない?」

「まだ高校生だしそんな相手いないよ。美穂は?」
「学校で気になってる人がいて、今度デートに行くの!」

「いいなー」
 萌々香は素直に羨んだ。萌々香は出会いがなくて、いつも女友達とばかり遊んでいる。