髪も結い上げられ、かんざしを何本か挿される。垂れのついているもので、頭を動かすたびに飾りの金属が触れ合ってしゃらんと鳴った。

「魔女でもプリンセスでもなく、なんでこんな和風なの?」
「うちが和菓子店だからよ」

 うんざりする。魔女なら黒いワンピースに黒い帽子で、まだ恥ずかしさが減っただろうに。

 和菓子店だというならトリックオアトリートと言わずに甘味またはいたずら、とでも子供に言わせるのか。そもそもハロウィンに便乗しなければこんなかっこうをしなくてすんだのに。

「よく作るよね……」
 萌々香があきれると、貴子は久しぶりの傑作だわ、と笑った。

「さあ、そのかっこうできっちり宣伝してもらうわよ!」
 萌々香はため息をついて草履をはいた。

 * * *

 午前中の商店街はさほどお客様が来ない。雨ともなればなおさらだ。いくらアーケードで商店街は雨にぬれずにすむとはいえ、そこに来るまでに濡れてしまう。

 それなのにさわさわと活気の予感のようなものをたずさえ、商店街は目覚めたばかりのようなけだるい空気を宿していた。
隣の八百屋にはチャイナドレスの女性がいた。幼馴染の美穂だ。