ビルの瓦礫に埋もれた少女。
雨に濡れた高層ビルの立つ町。
雨はいまだに止んでいない。
「まさか…こんな少女に化けた怪人がいるなんて…ねぇ…俺も驚きだよ。」
スーパー能力代わりのスーツを着込んだ俺、アメリカのトップヒーロー、シャイニーは、ジェット噴射を止めて、地上に降り立つ。
地上には、頭から出血した一人の少女。
少女は白色のRIという文字の刻まれたナイフを握っている。
「君が、RIのメンバーの一人か。」
「だ…だったらなんなの!?殺すつもり!?」
半泣き状態の少女は、ナイフをしっかりと握って、俺のゴーグルの奥にある目を睨む。
「もちろん。害獣は駆除しないと、市民に危険が訪れるからね。」
「私はッ!!!!害獣なんかじゃないよ!!!!!!」
「はあ…新幹線も粉砕するほどのパンチを食らっても出血程度で済む女の子を、害獣以外になんと言おうか…俺は…言葉が見つからないね…」
「あなた…シャイニーって人…?ユミーが言ってた…超強力なスーツを着て…秒速500mを超える速度で移動して…核ミサイルを食らっても傷一つつかない特殊なスーツと…ゴーグルから放たれる高電圧ビームとか…そういうのから…スーパーマンを超える人として…ハイパーマンって呼ばれてるって…」
俺の愛称、それはハイパーマンだ。
弾丸よりも早く、力は戦車より強く、高い高層ビルもひとっ飛び。
それが俺のキャッチフレーズ。
「あなたを倒せば…私が一番強いことになる!!!絶対に…殺すんだから!!!」
「君みたいな怪物は好きじゃないね。好戦的な奴ほど、危機感が欠如している。今君が選ぶべき手段は『戦う』なんかよりも、『逃げる』の方が良さそうだけど?」
少女は頭の血を手で拭い取ると、ナイフを両手でぎっしりと握った。
俺は、腰に手を当てて胸を張った状態から変わらない。
「うるさい!!!!私の気持ちが!!!あなたにはわからない!!!!!私がどんな思いでこの能力を使っているのか!!!!!私の人生を破滅させたこの能力をどんな思いで使ってるのか!!!」
俺は顎に手を当てる。
「ふーん…君が人生って…君人間じゃないのに…よくその言葉使えたもんだよね。」
「あああああ!!!!!!!!なんでみんな私のことを怪物呼ばわりするの!!!!」
少女は目の前か一瞬で消えると、全自動プログラムが生体反応を確認し、全自動で少女の後ろから突撃されるナイフの刃を避けた。
「うぉ…早いね!」
「言われなくても!!!わかってるって!!!!」
一本のナイフは俺の心臓を狙って降り掛かる。
俺のスーツは特別製で、生体反応を元に、攻撃意思があるものから神経の通り道などを調べ、そして、次に来る攻撃を回避。
要するに相手の心を読み、全自動で回避するこのスーツ。
なかなか優秀なもんで、並の相手じゃ、掠るどころか、拘束だってできる。
そういえば…まだ一つ拘束具が残っていたな…
俺は、迫り来るナイフを腕で弾き飛ばし、少女の腕を握る。
「え!?」
「逮捕だぁ~」
俺は少しふざけながら、拘束具を少女に取り付けた。
拘束具は、緑色の光を放ちながら、床に張り付き、少女の腕を地面に固定される。
小さな女の子にこんなことをするのも気が引ける気がするけど…
俺は、足に力を溜める。
「な、何これ!?こんなの…直ぐに解いてやるんだか…」
緑色に染まっていく脚部のパワースーツは、その溜まったパワーを一気に解放するように、小さな少女の顔面を狙って蹴りを喰らわせる。
そして、蹴りを入れられた少女は直ぐ目の前にあったビルを貫通する。
バアアン!!!!!と音を立てて、ビルが崩れそうになるが、俺はそのビルの頂上までスーツのジェット噴射で飛び、そして、ビルの頂上から少し下を思いっきり殴り、少女がビルを貫通した方向へ、ビルを倒す。
バアアアアン!!!!!!
激しい爆発音が、俺の殴った場所から響いた。
耳の中に残る大きな音は、地面に向かって打ちつけるビルの音がかき消す。
「これはあの、怪人の所為にしようかな。」
倒れたビルの瓦礫を打ち破ってミサイルのように飛んでくる、少女。
「痛いんだけど!!!!!!!」
「そうです…っか!!!!」
俺は直線に飛んでくるそれを両手で小蝿のように叩き落とす。
真下に直下ではたき落とされる少女に向かって俺は腕を振って、少女が倒れている所へ拳を入れる。
拳は、少女の腹に当たり、血液を大量にその場に吐き出す。
「ああ…かわいそうに…」
「くそがああああああ!!!!!!!!!!」
少女はナイフを握ると、そのナイフを俺に向かって振る。
全自動プログラムが発動し、ナイフの攻撃を避けるように、少し退散。
少女からは雨だけでは流しきれないほどの大量出血。
「ああ…哀れだなぁ…まだいくつかのショッピングモールが襲われていると通報が来ているんだ。早く死んで欲しいのだけれども…」
「そう簡単に死ぬかよ!!!!!私はあんたを倒してみんなと生きるんだ!!!!!」
「はぁ…ほんと、悪の組織が正義面とか、やめて欲しいんだが?」
俺はゴーグルの両端に付いている2つのボタンを同時に押す。
「まあ、良い。直ぐに死ぬからな。」
次の瞬間、ゴーグルからは高電圧ビームが放たれ、少女に直撃する。
少女は、放たれたビームをクロスした腕で受け止めると、服だけが焼ける。
「へー…案外耐えるのか」
「ん!!!!」
眉皺を作り、俺を睨む少女はナイフを握りしめて、一瞬の内に俺の懐に潜る。
少女が先ほどまでいた場所にはワンテンポ遅れて衝撃と風圧が走る。
「うぉ!!!!」
突き刺さる、ナイフ。
スーツの右手の部品が一つ外れたが、動きの問題は無い。
まだまだ戦える状態。
俺は、少女を両腕で掴み、膝で蹴りを入れる。
「ぐはぁ!!!!!」
汚い血が俺と少女の間を舞っている間に俺はその場から離れて少女の吐いた血が俺に付着するよりも先に、少女を両手で突き飛ばす。
そして、突き飛ばされた少女を背中のガジェットを使い追いかけて、踵でうなじを狙う。
「がああああ!!!!」
もう力も入らないだろうな。
ここを折られたら、人間では下半身が動かなくなるはずだし。
ナイフを握ったままの少女。
少女は俺の足を掴むと、ナイフを使ってスーツのパーツを弾き飛ばした。
「がああああああ!!!!!!!!」
__________________________________________________
「ん?」
何か今…聞こえたような…
ライリーの声…?
カントウでも…ユミーでも無い声…
俺は占拠していたショッピングモールなるものから離れる。
「やはり…何か聞こえる…」
俺は体の背中に翼を生やして、空へと飛び立つ。
まさか…そんなはずはないだろうな…
勘違いであっててくれ!!!
________________________________________________
「くそが!!!!小娘が!!!!!」
俺は足に這いつくばる少女の頭をひたすら踏み潰す。
衝撃が伝わり、地盤が緩くなる地面。
そして、血が吹き上がる少女の頭。
俺は、手を離した少女の横腹をサッカーボールのように蹴り上げると、ビルにぶつかり瓦礫の埃を溢す。
「ガキが!!!!!子供の分際で!!!!このスーツの装甲を剥がそうとするとは!!!!!害獣が暴れやがって!!!!」
露わになったふくらはぎに傷。
ナイフで切られ、痺れるように痛いその傷口。
くそが!!!!!あんなガキにやられるなんて!!!!!
アーマードスーツだって無敵なわけじゃない。
素材が大きな爆発に耐えられるだけで、外から来る衝撃には強いが、中からの衝撃には弱い。
つまり、剥がすという行為には弱いのだ。
関節部分から装甲を剥がしていけば、それはもう、いつしかは装甲が剥がれる時が来るだろう。
だから、持ち前のスピードでカバーすれば良いだけだ。
だが!!このガキは俺の足を掴んで離さなかった!!!!!
まだ息はある。
殺すしかないな。
「ぐうううう………っは!!!ま、まだ!!!!」
滲み出る汗と涙。
命乞いでも始まるのか?
「まだ…わだぢはまげでない!!!!!!」
まだ諦めないのか…
「やめとけ。苦しいだけだぞ?」
顔面に叩き込む拳。
千鳥足の少女に叩き込むには容易だ。
「があああああ…!!!!痛いよおぉぉぉ!!!!!!!!」
あ、泣いた。
「お?良いね!!良いじゃん!!!良い顔してるじゃん!!!!!」
俺は腰くらいの身長の少女の髪の毛を掴み取ると、「はははははは!!!!!!!」と高笑いしてみせる。
「痛いぃぃ!!!!!!!!!!や、やめてよぉ!!!!!!」
「やめるわけねぇじゃん!!!!!!」
俺は少女の頭を地面へと叩きつけると、首を掴んで、鋼の拳を腹に向かってぶつける。
「ぐはっ!!!!!!!ぐはっ!!!!!!!」
ズドオオオオオオン!!!!!!!!!
衝突音が響き、俺らの周りの地面にヒビが走る。
それでも俺は拳を振り下ろすのを止めない。
絶対に止めない。
「正義ってのはよぉぉ!!!!!合法的に暴力を触れるから!!!!!!良いもんだよなぁ!!!!!!!」
バアアアアアン!!!!!!!!
「ぐはぁぁぁ!!!!!!!!」
少女から滲み出る涙と血液。
吐血したことにより出た血はスーツに飛び散る。
「あ?汚ねぇ…なぁ!!!!!!!」
もう1発!!!!!!
肉が弾かれる感触と、骨の折れる音。
「ぐはぁっ!!!!!いだ…いよぉぉぉ………」
顔に皺が次々に出来て、少女の呼吸は荒くなる。
すでに死人が囁くように弱ってきた声に笑いが止まらない。
そういえば、新機能があったんだった!!
硬いコイツで試してみるか!!
スーツの損傷はすでに50%を下回っている。
それでも関係ない。
俺は、腕の裏についている、セレクターのボタンを全て押し、システムを起動する。
右腕が急に闇を増殖させるように輝きを見せる。
「これはなぁ…衝突時に熱を発生させて相手の皮膚を溶かす技で…ゴーグルから放たれるビームの5000倍の威力があるんだ…これで…お前にトドメをさす!!!!!」
__________________________________________________
「居た!!!ライリー…」
そこには血だらけのライリーと、そして、鉄を纏った人間の姿…
あれはどこかで見覚えがある…
あれは…
俺は変形した背中の筋肉を普通の状態にして地上に降り立つと、その男の名前を呼んだ。
「シャイニー!!!!!!!」
「じゃあな!!!!!」
シャイニー右腕が黒く光り、そして、シャイニーはその黒い腕を振り下ろす。
ライリーのお腹に向かって。
ブシャアア!!!!!!!
突如として散ったライリーのお腹の血液。
赤く染まったそのシャイニーの腕は、一瞬で液体が蒸発する。
「ら…ライリー…?」
俺は一度止まった。
まて…そんなはずはない…
「シャイニー!!!!!!!!!!」
俺の能力は体を自在に変形させる能力。
だから俺は右腕を剣のように尖らせた。
そして、思いっきり、シャイニーの首に向かって刃を走らせる。
「うおあぶね!!」
シャイニーは、首を後ろに反らして、攻撃をかわす。
「くそ…今は万全の状態じゃないんだ…一度、帰らさせてもらおうかな…」
「待てえぇえぇえぇぇぇええぇぇえぇぇぇ!!!!!!!!!」
俺が叫んでも、シャイニーは、背中のジェットを噴出させて、空へと跳びだった。
「クソ!!!!!!クソクソクソクソクソ!!!!!!!!!クソが!!!!!!!」
俺は仰向けになって倒れているライリーの側へ寄る。
ライリーの腹部は大きな穴が空いており、そこから大量の血が流れ出る。
「ベリア…ル……苦しいよぉ…痛いよぉ……」
掠れ声で精一杯に声を出すライリーを持ち上げようと、俺は、両手でライリーを持ち上げるが、さらに出血し、慌てて俺は地面にライリーを置く。
「大丈夫だから!!!!!まだ…助かる方法はあるはずだから!!!!!」
そうだ…!!!この前にユミーが言っていた病院という所に送れば…ライリーも…きっと良くなるはず…
あ、でも…俺ら怪物だから…無理なのかも…
「ベリ…アル……痛いよぉ…とっても痛いよぉ…生きてたいよぉ…なんで…こんな不幸にならないとなの…?」
わからない…俺らはただ単に生きてたりしてただけだ…なのに…なのに…
「なんでライリーがこんな目に…!!!!!」
焦点の合わない瞳。
口の筋力をも動かせないのか、唇の横から流れ出る涎と赤い血。
俺は瀕死のライリーの頭を胸で抱きしめる。
「そうだ!!!!ユミーなら!!!!!」
俺は携帯を出し、ユミーに電話を掛ける。
プルルルルルルル………………
いつまで経っても出てこない…
ユミーは一体何をしてるんだよ!!!!!!
「ベリ…アル………苦しいよぉ…死にたくないよぉ……生きてたいよぉ………なんで……死ななきゃいけないの……?」
焦点の合わなくなり、本当に見えているのか怪しい目から、涙が流れ出る。
すでに表情は死んでいて、皺が増えるとか、悲しい顔になるとか…そういうのは一切なく…ただの無の表情。
それでも、流れでた涙。
「大丈夫だから!!!!!助けるから!!!!俺が、絶対に!!!!!!!」
「私……ベリアルと出会えてよかった…………」
「は…?待ってくれ…そんな……そんなこと言うなよ!!!!!その言葉は…この戦いが終わってから言う約束だったろ!!!!」
「ベリアル…研究所の人たちとか……お母さんとかよりも……ずっと優しかった………私を大切にしてくれた………私を…大事にしてくれた……ありがと……大好き…だよ…」
「うあっ………くっそ………お…俺も…大好きだ…………!!!!」
「ありがと………これで……………………りょお……もい………………………」
薄れていった声が遂に聞こえなくなる。
そして、瞳から力が抜けたようになり、小さな体の少女の呼吸が止まった。
俺はライリーの胸に手を当ててみるが、昨日まで元気だった鼓動はぴくりともしない。
俺は、ライリーの瞼をそっと閉じさせてあげると、しわくちゃになった顔で、一旦笑顔を作る。
「い……今まで……ありがとぉ……………」
優しく、冷たくなった唇にそっと唇を重ねる。
ライリーの血の味。
ライリーは少し前に教えてくれた。
好き同士の人は、こうやってキスをすると。
「これで…良いんだよな…………うぐっ………んああ………うがぁ…………」
笑ってたいよ………
笑ってたいのに………
ライリーの最後を笑ってお別れしたかったのに………………
「うあああああ…………ああああああ……あああああああ………」
ぽたりとライリーの冷たい頬に落ちる雫。
雨じゃなくて、俺の体から落ちた雫。
守れなかった……………
大切な物を………守れなかった…………
「うあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
雨に濡れた高層ビルの立つ町。
雨はいまだに止んでいない。
「まさか…こんな少女に化けた怪人がいるなんて…ねぇ…俺も驚きだよ。」
スーパー能力代わりのスーツを着込んだ俺、アメリカのトップヒーロー、シャイニーは、ジェット噴射を止めて、地上に降り立つ。
地上には、頭から出血した一人の少女。
少女は白色のRIという文字の刻まれたナイフを握っている。
「君が、RIのメンバーの一人か。」
「だ…だったらなんなの!?殺すつもり!?」
半泣き状態の少女は、ナイフをしっかりと握って、俺のゴーグルの奥にある目を睨む。
「もちろん。害獣は駆除しないと、市民に危険が訪れるからね。」
「私はッ!!!!害獣なんかじゃないよ!!!!!!」
「はあ…新幹線も粉砕するほどのパンチを食らっても出血程度で済む女の子を、害獣以外になんと言おうか…俺は…言葉が見つからないね…」
「あなた…シャイニーって人…?ユミーが言ってた…超強力なスーツを着て…秒速500mを超える速度で移動して…核ミサイルを食らっても傷一つつかない特殊なスーツと…ゴーグルから放たれる高電圧ビームとか…そういうのから…スーパーマンを超える人として…ハイパーマンって呼ばれてるって…」
俺の愛称、それはハイパーマンだ。
弾丸よりも早く、力は戦車より強く、高い高層ビルもひとっ飛び。
それが俺のキャッチフレーズ。
「あなたを倒せば…私が一番強いことになる!!!絶対に…殺すんだから!!!」
「君みたいな怪物は好きじゃないね。好戦的な奴ほど、危機感が欠如している。今君が選ぶべき手段は『戦う』なんかよりも、『逃げる』の方が良さそうだけど?」
少女は頭の血を手で拭い取ると、ナイフを両手でぎっしりと握った。
俺は、腰に手を当てて胸を張った状態から変わらない。
「うるさい!!!!私の気持ちが!!!あなたにはわからない!!!!!私がどんな思いでこの能力を使っているのか!!!!!私の人生を破滅させたこの能力をどんな思いで使ってるのか!!!」
俺は顎に手を当てる。
「ふーん…君が人生って…君人間じゃないのに…よくその言葉使えたもんだよね。」
「あああああ!!!!!!!!なんでみんな私のことを怪物呼ばわりするの!!!!」
少女は目の前か一瞬で消えると、全自動プログラムが生体反応を確認し、全自動で少女の後ろから突撃されるナイフの刃を避けた。
「うぉ…早いね!」
「言われなくても!!!わかってるって!!!!」
一本のナイフは俺の心臓を狙って降り掛かる。
俺のスーツは特別製で、生体反応を元に、攻撃意思があるものから神経の通り道などを調べ、そして、次に来る攻撃を回避。
要するに相手の心を読み、全自動で回避するこのスーツ。
なかなか優秀なもんで、並の相手じゃ、掠るどころか、拘束だってできる。
そういえば…まだ一つ拘束具が残っていたな…
俺は、迫り来るナイフを腕で弾き飛ばし、少女の腕を握る。
「え!?」
「逮捕だぁ~」
俺は少しふざけながら、拘束具を少女に取り付けた。
拘束具は、緑色の光を放ちながら、床に張り付き、少女の腕を地面に固定される。
小さな女の子にこんなことをするのも気が引ける気がするけど…
俺は、足に力を溜める。
「な、何これ!?こんなの…直ぐに解いてやるんだか…」
緑色に染まっていく脚部のパワースーツは、その溜まったパワーを一気に解放するように、小さな少女の顔面を狙って蹴りを喰らわせる。
そして、蹴りを入れられた少女は直ぐ目の前にあったビルを貫通する。
バアアン!!!!!と音を立てて、ビルが崩れそうになるが、俺はそのビルの頂上までスーツのジェット噴射で飛び、そして、ビルの頂上から少し下を思いっきり殴り、少女がビルを貫通した方向へ、ビルを倒す。
バアアアアン!!!!!!
激しい爆発音が、俺の殴った場所から響いた。
耳の中に残る大きな音は、地面に向かって打ちつけるビルの音がかき消す。
「これはあの、怪人の所為にしようかな。」
倒れたビルの瓦礫を打ち破ってミサイルのように飛んでくる、少女。
「痛いんだけど!!!!!!!」
「そうです…っか!!!!」
俺は直線に飛んでくるそれを両手で小蝿のように叩き落とす。
真下に直下ではたき落とされる少女に向かって俺は腕を振って、少女が倒れている所へ拳を入れる。
拳は、少女の腹に当たり、血液を大量にその場に吐き出す。
「ああ…かわいそうに…」
「くそがああああああ!!!!!!!!!!」
少女はナイフを握ると、そのナイフを俺に向かって振る。
全自動プログラムが発動し、ナイフの攻撃を避けるように、少し退散。
少女からは雨だけでは流しきれないほどの大量出血。
「ああ…哀れだなぁ…まだいくつかのショッピングモールが襲われていると通報が来ているんだ。早く死んで欲しいのだけれども…」
「そう簡単に死ぬかよ!!!!!私はあんたを倒してみんなと生きるんだ!!!!!」
「はぁ…ほんと、悪の組織が正義面とか、やめて欲しいんだが?」
俺はゴーグルの両端に付いている2つのボタンを同時に押す。
「まあ、良い。直ぐに死ぬからな。」
次の瞬間、ゴーグルからは高電圧ビームが放たれ、少女に直撃する。
少女は、放たれたビームをクロスした腕で受け止めると、服だけが焼ける。
「へー…案外耐えるのか」
「ん!!!!」
眉皺を作り、俺を睨む少女はナイフを握りしめて、一瞬の内に俺の懐に潜る。
少女が先ほどまでいた場所にはワンテンポ遅れて衝撃と風圧が走る。
「うぉ!!!!」
突き刺さる、ナイフ。
スーツの右手の部品が一つ外れたが、動きの問題は無い。
まだまだ戦える状態。
俺は、少女を両腕で掴み、膝で蹴りを入れる。
「ぐはぁ!!!!!」
汚い血が俺と少女の間を舞っている間に俺はその場から離れて少女の吐いた血が俺に付着するよりも先に、少女を両手で突き飛ばす。
そして、突き飛ばされた少女を背中のガジェットを使い追いかけて、踵でうなじを狙う。
「がああああ!!!!」
もう力も入らないだろうな。
ここを折られたら、人間では下半身が動かなくなるはずだし。
ナイフを握ったままの少女。
少女は俺の足を掴むと、ナイフを使ってスーツのパーツを弾き飛ばした。
「がああああああ!!!!!!!!」
__________________________________________________
「ん?」
何か今…聞こえたような…
ライリーの声…?
カントウでも…ユミーでも無い声…
俺は占拠していたショッピングモールなるものから離れる。
「やはり…何か聞こえる…」
俺は体の背中に翼を生やして、空へと飛び立つ。
まさか…そんなはずはないだろうな…
勘違いであっててくれ!!!
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「くそが!!!!小娘が!!!!!」
俺は足に這いつくばる少女の頭をひたすら踏み潰す。
衝撃が伝わり、地盤が緩くなる地面。
そして、血が吹き上がる少女の頭。
俺は、手を離した少女の横腹をサッカーボールのように蹴り上げると、ビルにぶつかり瓦礫の埃を溢す。
「ガキが!!!!!子供の分際で!!!!このスーツの装甲を剥がそうとするとは!!!!!害獣が暴れやがって!!!!」
露わになったふくらはぎに傷。
ナイフで切られ、痺れるように痛いその傷口。
くそが!!!!!あんなガキにやられるなんて!!!!!
アーマードスーツだって無敵なわけじゃない。
素材が大きな爆発に耐えられるだけで、外から来る衝撃には強いが、中からの衝撃には弱い。
つまり、剥がすという行為には弱いのだ。
関節部分から装甲を剥がしていけば、それはもう、いつしかは装甲が剥がれる時が来るだろう。
だから、持ち前のスピードでカバーすれば良いだけだ。
だが!!このガキは俺の足を掴んで離さなかった!!!!!
まだ息はある。
殺すしかないな。
「ぐうううう………っは!!!ま、まだ!!!!」
滲み出る汗と涙。
命乞いでも始まるのか?
「まだ…わだぢはまげでない!!!!!!」
まだ諦めないのか…
「やめとけ。苦しいだけだぞ?」
顔面に叩き込む拳。
千鳥足の少女に叩き込むには容易だ。
「があああああ…!!!!痛いよおぉぉぉ!!!!!!!!」
あ、泣いた。
「お?良いね!!良いじゃん!!!良い顔してるじゃん!!!!!」
俺は腰くらいの身長の少女の髪の毛を掴み取ると、「はははははは!!!!!!!」と高笑いしてみせる。
「痛いぃぃ!!!!!!!!!!や、やめてよぉ!!!!!!」
「やめるわけねぇじゃん!!!!!!」
俺は少女の頭を地面へと叩きつけると、首を掴んで、鋼の拳を腹に向かってぶつける。
「ぐはっ!!!!!!!ぐはっ!!!!!!!」
ズドオオオオオオン!!!!!!!!!
衝突音が響き、俺らの周りの地面にヒビが走る。
それでも俺は拳を振り下ろすのを止めない。
絶対に止めない。
「正義ってのはよぉぉ!!!!!合法的に暴力を触れるから!!!!!!良いもんだよなぁ!!!!!!!」
バアアアアアン!!!!!!!!
「ぐはぁぁぁ!!!!!!!!」
少女から滲み出る涙と血液。
吐血したことにより出た血はスーツに飛び散る。
「あ?汚ねぇ…なぁ!!!!!!!」
もう1発!!!!!!
肉が弾かれる感触と、骨の折れる音。
「ぐはぁっ!!!!!いだ…いよぉぉぉ………」
顔に皺が次々に出来て、少女の呼吸は荒くなる。
すでに死人が囁くように弱ってきた声に笑いが止まらない。
そういえば、新機能があったんだった!!
硬いコイツで試してみるか!!
スーツの損傷はすでに50%を下回っている。
それでも関係ない。
俺は、腕の裏についている、セレクターのボタンを全て押し、システムを起動する。
右腕が急に闇を増殖させるように輝きを見せる。
「これはなぁ…衝突時に熱を発生させて相手の皮膚を溶かす技で…ゴーグルから放たれるビームの5000倍の威力があるんだ…これで…お前にトドメをさす!!!!!」
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「居た!!!ライリー…」
そこには血だらけのライリーと、そして、鉄を纏った人間の姿…
あれはどこかで見覚えがある…
あれは…
俺は変形した背中の筋肉を普通の状態にして地上に降り立つと、その男の名前を呼んだ。
「シャイニー!!!!!!!」
「じゃあな!!!!!」
シャイニー右腕が黒く光り、そして、シャイニーはその黒い腕を振り下ろす。
ライリーのお腹に向かって。
ブシャアア!!!!!!!
突如として散ったライリーのお腹の血液。
赤く染まったそのシャイニーの腕は、一瞬で液体が蒸発する。
「ら…ライリー…?」
俺は一度止まった。
まて…そんなはずはない…
「シャイニー!!!!!!!!!!」
俺の能力は体を自在に変形させる能力。
だから俺は右腕を剣のように尖らせた。
そして、思いっきり、シャイニーの首に向かって刃を走らせる。
「うおあぶね!!」
シャイニーは、首を後ろに反らして、攻撃をかわす。
「くそ…今は万全の状態じゃないんだ…一度、帰らさせてもらおうかな…」
「待てえぇえぇえぇぇぇええぇぇえぇぇぇ!!!!!!!!!」
俺が叫んでも、シャイニーは、背中のジェットを噴出させて、空へと跳びだった。
「クソ!!!!!!クソクソクソクソクソ!!!!!!!!!クソが!!!!!!!」
俺は仰向けになって倒れているライリーの側へ寄る。
ライリーの腹部は大きな穴が空いており、そこから大量の血が流れ出る。
「ベリア…ル……苦しいよぉ…痛いよぉ……」
掠れ声で精一杯に声を出すライリーを持ち上げようと、俺は、両手でライリーを持ち上げるが、さらに出血し、慌てて俺は地面にライリーを置く。
「大丈夫だから!!!!!まだ…助かる方法はあるはずだから!!!!!」
そうだ…!!!この前にユミーが言っていた病院という所に送れば…ライリーも…きっと良くなるはず…
あ、でも…俺ら怪物だから…無理なのかも…
「ベリ…アル……痛いよぉ…とっても痛いよぉ…生きてたいよぉ…なんで…こんな不幸にならないとなの…?」
わからない…俺らはただ単に生きてたりしてただけだ…なのに…なのに…
「なんでライリーがこんな目に…!!!!!」
焦点の合わない瞳。
口の筋力をも動かせないのか、唇の横から流れ出る涎と赤い血。
俺は瀕死のライリーの頭を胸で抱きしめる。
「そうだ!!!!ユミーなら!!!!!」
俺は携帯を出し、ユミーに電話を掛ける。
プルルルルルルル………………
いつまで経っても出てこない…
ユミーは一体何をしてるんだよ!!!!!!
「ベリ…アル………苦しいよぉ…死にたくないよぉ……生きてたいよぉ………なんで……死ななきゃいけないの……?」
焦点の合わなくなり、本当に見えているのか怪しい目から、涙が流れ出る。
すでに表情は死んでいて、皺が増えるとか、悲しい顔になるとか…そういうのは一切なく…ただの無の表情。
それでも、流れでた涙。
「大丈夫だから!!!!!助けるから!!!!俺が、絶対に!!!!!!!」
「私……ベリアルと出会えてよかった…………」
「は…?待ってくれ…そんな……そんなこと言うなよ!!!!!その言葉は…この戦いが終わってから言う約束だったろ!!!!」
「ベリアル…研究所の人たちとか……お母さんとかよりも……ずっと優しかった………私を大切にしてくれた………私を…大事にしてくれた……ありがと……大好き…だよ…」
「うあっ………くっそ………お…俺も…大好きだ…………!!!!」
「ありがと………これで……………………りょお……もい………………………」
薄れていった声が遂に聞こえなくなる。
そして、瞳から力が抜けたようになり、小さな体の少女の呼吸が止まった。
俺はライリーの胸に手を当ててみるが、昨日まで元気だった鼓動はぴくりともしない。
俺は、ライリーの瞼をそっと閉じさせてあげると、しわくちゃになった顔で、一旦笑顔を作る。
「い……今まで……ありがとぉ……………」
優しく、冷たくなった唇にそっと唇を重ねる。
ライリーの血の味。
ライリーは少し前に教えてくれた。
好き同士の人は、こうやってキスをすると。
「これで…良いんだよな…………うぐっ………んああ………うがぁ…………」
笑ってたいよ………
笑ってたいのに………
ライリーの最後を笑ってお別れしたかったのに………………
「うあああああ…………ああああああ……あああああああ………」
ぽたりとライリーの冷たい頬に落ちる雫。
雨じゃなくて、俺の体から落ちた雫。
守れなかった……………
大切な物を………守れなかった…………
「うあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」