私は書類に記載を終えるとサリュアさんに渡した。
 受け取ったサリュアさんは書類をみている。その後、登録カードに記載すると私にくれた。

 「綺麗な文字を書くのね。もしかして……元は貴族とかかしら?」
 「えっ!? いえ、全然……ぜーんぜん違いますわっ!」

 驚き、そのせいか私は声が裏返っている。
 だけど鋭いと思った。恐らく色んな人たちをみて来ているため分かるのかもしれない。

 「そう? じゃあ今まで文字を書く機会が多かったのね」
 「はい、代筆をしていたこともあります」
 「それは凄いわ。もしそういった仕事が入ったら真っ先に紹介するわね」

 なんでしょう?……さっきとは明らかに違う態度。ですが悪い意味でではありませんし……大丈夫ですね。

 「ありがとうございます。力仕事よりも、そういったものの方が助かりますわ」
 「そうなのね。あーそうそう、メルナセリアは冒険者ギルドって初めて?」
 「はい、真面に働くこと自体が初めてです」

 それを聞きサリュアさんは説明し始めた。
 サリュアさんの説明では冒険者ギルド共通のランクがあるらしい。
 スペード♠、クローバー♧、ダイヤ♦、ハート♡、スター☆彡と云うランクがある。最初はスペードから始まり最高ランクがスターだ。
 という事は私は現在スペードである。
 それと依頼は直接受付で聞くか掲示板をみて受ける。ただ希に、その人にあった仕事があると声をかけてくれるみたい。
 これは助かるわ……探す手間が省けるものね。

 「……こんな感じよ。それで今日は、どうするの?」
 「そうですねぇ……住む所も探したいけれど、その前にお金を稼がないとですよね?」
 「もしかして家出?」

 そう言われ私は「……」一瞬、言葉を失った。

 「い、家出じゃありません。まぁ……似たようなものですが、今は家に帰れないのです」
 「なるほど……じゃあ貸家なら月払いで安い所を知っているけど」
 「貸家ですか……安いって、どのくらいなのです?」

 私は気になり聞いてしまった。でも安いのであれば屋敷を購入するまでの間、宿屋に泊まっているよりもいいかと思ったのだ。

 「家にもよるけど金貨二枚から十枚って所かしら」
 「銀貨ではなくて金貨なのですね。因みに仕事をすると、だいたいどのくらいになるのでしょう?」
 「依頼内容にもよるわね。でもほとんどが銀貨払いが多いわ」

 それを聞き私は悩んだ。銀貨もチリも積もれば金貨相当になる。一ヶ月、その分の仕事を熟せばいいだけだ。それに安い所を探せばいいのだから。
 それと今なら金貨が結構ある。それなら……そうしよう。

 「どこに行けば借りることができますか?」
 「それならグランが知ってるから案内してもらうといいわよ」
 「お、おお……オレが案内するのか?」

 なんかグラン……迷惑そうな顔をしてる。私と一緒に行動するのが嫌なのかな?

 そう思った瞬間、なぜか涙が溢れでる。

 「ちょ、なんで泣いてるんだ?」
 「グラン……貴方が嫌な顔をしたからでしょ!」
 「えっ!? そんなつもりなかったんだけどな。だけど……ごめん、悪かった」

 グランは頭を下げ謝ってくれた。

 「ううん……大丈夫よ。それにグラン、無理に私に付き合わないでね」
 「あーえっと……無理に付き合ってる訳じゃない。ただこれから仕事をしないと」
 「そういう事なのね。その仕事って私もできるのかしら?」

 私はそう聞きグランとサリュアさんをみる。

 「どうかしら? 確か今日の仕事って隣村への荷物の配達よね」
 「ああ、外は魔物や魔獣がでるからな。戦闘経験がないと、つらいだろ」
 「魔法程度なら使えますわ」

 そう私が言うとグランは難しい顔をした。

 「魔法か……杖か補助的な魔道具は持ってないのか?」
 「ありませんわ……ですが購入すれば大丈夫かと」
 「そうだな……サリュアさん、メルナも受けても大丈夫か?」

 そうグランが聞くとサリュアさんは、コクッと頷きカウンターの奥に向かう。
 その後サリュアさんは依頼書を持って来て説明してくれた。
 それを聞き終えると私は、別に持ってきた書類にサインをする。
 そして、そのあと私はグランとギルドを出た。