ここは、いつもグランディオが来ている食事処だ。周囲に女性は少なく男性が多い。
 私はグランディオとカウンター席に腰かけ話しながら食事をしている。

 「グランディオは沢山、食べるのね」
 「ん? ああ……体を動かすからな。それよりも……オレの名前を呼ぶときは、グランでいいぞ」
 「グラン……そうね。確かに、この方が呼び易いわ。じゃあ私も、メルナでいいわよ」

 そう言い私は、ニコリと笑みを浮かべた。

 「分かった、そう呼ぶ。そういえば、さっきから余り食べてないんじゃないのか?」
 「あーそうね。でも、これ以上は食べれないかなぁ」
 「……勿体ないな。じゃあ、オレがもらっていいか?」

 そう聞かれ私は、コクッと頷いてしまう。
 それをみてグランは嬉しそうに私が食べていた物を自分の所に持ってくる。それを食べ始めた。

 ハッ! これてっ間接……キス…………迂闊でしたわ。私も、グランが食べたおかずを口にするべきでした。いえ、今でも間に合いますわよね?

 そう思いながらグランが食べているところを私は、ジーっとみている。

 「……もしかして、食べたくなったのか?」

 そう言いグランは、おかずを指差した。

 「あーええ、なんかグランが余りにも美味しそうに食べるから……」
 「そうか? じゃあ、食べれる分を取り分けろ」

 そう言われ私は目を輝かせグランが口を付けたと思われる場所を別の皿に取り分ける。

 「ありがとうございます」

 私は唾を飲み込んだあと食べた。

 「おっ、おう……構わないが。そんなに慌てて食べるとむせるぞ」
 「だ、大丈夫ですわ。ゴホッゴホッ……」
 「あーほら、何やってんだ?」

 そう言いグランは私に水をくれる。それもグランの飲みかけだ。
 嬉しさのあまり、その水を一気に飲み干した。

 「大丈夫か?」
 「はい、落ち着きましたわ」
 「そうか……それなら良かった」

 グランはそう言い、ニコッと笑みを浮かべる。
 その笑顔をみて私の胸の鼓動は、ドクンドクンと早くなった。

 ズル過ぎるわ……こんなにかっこいいのに、この素敵な笑顔。ああ……食べられたい。

 私は何を妄想しているのかと、ハッと我に返り顔が熱くなる。

 「……どうしたんだ? 顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」
 「あーいえ、大丈夫ですわ。そういえばグランって、なんで旅をして鍛えているのです?」
 「……強くなりたい……悪いヤツを倒せるぐらいにな」

 そう言いグランは、どこか遠くをみているようにみえた。

 「倒したい悪い者がいるのですか?」
 「ああ、そういう事だ。そうだった……メルナは、一人なのか?」
 「そうね……今はそうよ。色々あって、昨日から一人で生活することになったの」

 私がそう言うとグランは心配そうにみる。

 「何があったか分からないけど……言えないことなのか?」
 「えーっと……そうね。できれば話したくないかなぁ」
 「そうか……それなら聞かない。オレも話せないことあるしな」

 そう言いグランは私をみた。
 私はみられて融けそうになる。

 「そうなのね。私は、これから仕事を探して……そのあと小さくてもいいから屋敷を購入しようと思ってるの」
 「凄いな……女で、そこまで考えてるなんて。男でも、そこまで考えられないヤツは沢山いる」
 「そ、そうかしら……ですが……ありがとうございます」

 私はそう言い、ニコッと笑った。

 「あ、ああ……。それじゃ……もしかして仕事を探しにギルドに向かうとこだったのか?」
 「ええ……商業ギルドに行く途中でした」
 「商業ギルドか……。ここの商業ギルドは余りいい噂を聞かないぞ」

 それを聞き私は、どうしてだろうと首を傾げる。

 「そうなのですね。でも、どうしてでしょうか?」
 「オレも、それほど知ってる訳じゃない。知ってることは……依頼主から多額の金をせしめてるだけじゃなく請け負う者に安い賃金しか払わないって話だ」
 「それって……本当なのですか?」

 そう聞くとグランは頷いた。

 「とある冒険者が依頼を受けて調べた。だが、その冒険者はオレに話した数日後……何者かに殺された」
 「……それが本当なら、役人に訴えた方がいいと思うのですが」
 「いや、証拠がない。証拠さえつかめればいいんだけどな」

 そう言いグランは無作為に一点をみて睨んでいる。
 その後、私はグランと話をしたあと食事処を出た。
 食事処を出ると私はグランに冒険者ギルドに行くことを勧められる。
 私はなんとなく嫌だったけどグランも一緒に行くと言ってくれた。そのため渋々ながら冒険者ギルドに向かうことにする。
 そして冒険者ギルドに向かいながら私はグランと話をしていた。