着物を着た、青年が立っていた。

「俺が呼んだのは、お前だけだ」

青年は、湊に目を向けた。

「俺を?真白ちゃんと本条さんはどこにいる?」

「お前たちより先に来たのは一人だけだ」

「一人だけって…真白か春香のどちらかはここにはいないってこと?」

天音が言った。


「お前たちの相手は別にいる」

青年は指を鳴らした。

「うわっ」

「えっ?」

床が抜けて、要と隼人、紫音と花蓮、天音と結奈はそれぞれ落ちていった。

「さて、お前たちは…」

青年が慧と千輝を見た。

その時、湊が護符を取り出した。

「鵺!」

そういうと、鵺が姿を現した。

「ここは俺が食い止めますから、二人は本条さんと真白ちゃんを探してください!」

「わかった」

慧が頷いて、千輝も後をついて行った。


「これは驚いた。まさか鵺に会うことが出来るとはな」

くくっと青年が笑った。

「少し、力を貸してくれないか?」

鵺は頷いた。


「何なのあいつ」

天音と結奈は薄暗いところにいた。

「なんか人間って感じしなかったから妖か式神だと思うよ」

「でもあやかしの気配じゃない気もしたけど…」

「じゃあ、誰かの式神とか?」

そのとき、何かの気配を感じた。

「なにか…いる?」

黒い霧が見えた。

「あれって邪気だよね?」

結奈が困惑していた。

だが、妖がいる気配はしない。

「こんにちは。久しぶりに人間の女の子が来てくれて、嬉しいな」

後ろから誰かの手が結奈の頬を包んだ。

「ひっ!」

「結奈!」

天音が扇子を出して、声がした方へ向かって仰いだ。

すると、青年が姿を見せた。

「君は威勢がいいね」

不気味なくらいに優しい笑顔を貼り付けていた。

「本当はこんなことしたくないんだけど、あの方の命令だから」

周りにあった邪気を集め、丸いボール状にしたものを結奈と天音に向かって放った。

結奈は笛を出して吹いた。

すると、邪気が消えた。

「君たち、あの巫女の道具を持ってるんだね。ということはそれを扱えるくらいの霊力はあるってことだ」

再び邪気を集めた。

「なら僕も、少しは本気にならないとね」


同じ頃、花蓮と紫音も彷徨っていた。

「ゴホゴホッ埃っぽい…」

紫音は咳き込んだ。

「ここ、あの部屋の下ってわけじゃないみたい」

花蓮が立ち上がって言った。

立ち上がると、天井があった。

「どこか別の部屋ってことか…」

「見て、あっちに出口があるよ」

「よし、行ってみよう」

二人が出口に向かって走り出した時、

「うふふ。逃がさないわよ」

声が聞こえて出口が消えた。

出口があった場所には、少女が立っていた。

「誰だ?」

紫音が警戒した表情になった。