蘇芳はかなりひどい怪我をしていた。

相手は相当強かったのだろう。

「でもどうして戦うことになったの?蘇芳は何か悪いことをしたの?」

「私は彩葉と出会うまで、常に邪気が体にまとわりついた状態だった。人間も何人か殺していたと思う。そして帝の屋敷までやって来た」

蘇芳の目が赤く光っている。

「その屋敷で最初に見つけたのが、女の赤子だった。私が襲い掛かろうとしたとき、帝の側近の陰陽師が現れた。その術師はとても強かった。私はそのまま屋敷から逃げて、何年かは自分の妖力で傷を塞いでいた」

しかし何年か経って再び傷が開いてしまい、妖力でも治らなかった。

「虫の息になっていた時に、彩葉が私を見つけた。彩葉は私の傷の手当をして、長い間まとわりついていた邪気を祓ってくれた」

それから彩葉と契約をして眷属になった。

「私は彩葉に眷属になった証として、私の妖力を分けた白と黒の勾玉を渡した。それがこれだ」

蘇芳は首からかけた白と黒の勾玉が合わさっているボールのようなものを真白に見せた。

それが光り出し、少年と少女が出てきた。

「この子たち、夏祭りの夏祭りの時の…」

それは夏祭りの時に立っていた男女だった。

「この子たちに真白を連れてくるよう言ったんだ」

「あんであんなに警戒されるようなことしたの?」

「それは、私が真白がいる場所に出向けば、あの時隣にいた退魔師の子に祓われるかもしれなかったからね」

「隼人のこと?」

蘇芳は頷いた。

「あの子は一番君を守りたいという気持ちが強かった。おそらく、前世で君を死なせてしまったことを後悔していたんだろうね」


隼人は、家で目を閉じて眠っていた。

薄く目を開けると、あたりは暗くなっていた。

「もう夜か…」

隼人は前世の夢を見ていた。

「…華は、夜叉がいなくなったあとどうなったんだ?」

隼人が見ていたのは、華と過ごしていた記憶だった。

「あの子は、ちゃんと幸せになれたのか?」

今となっては知る術もない。

「そうだといいんだけどな…」

その時、隼人のスマホが震えた。

「あぁ…そうか、もうすぐばあちゃんの命日か」

カレンダーの通知に祖母の命日が表示されている。

「墓参り、行かないとな…真白と要にも声をかけてみるか」