湊は、姉の渚に電話をかけていた。

『湊か。どうした?』

「夏に退魔師や術者の家系の集まりがあるでしょ?この間、琉晴さんがきて、真白ちゃんの他に要たちも連れてきていいって言われたんだけど…」

『…琉晴がきたのか?』

渚の声のトーンが低くなった。

「多分、こっちに用事があったんだと思う。…そういえば、その前にも玄道充って人が来たんだけど、姉さんは知ってる?俺も聞いたことはあるんだけど…」

『玄道家は神儀りの主催を任されている。今年は百鬼夜行と重なったようだな』

湊も父から聞かされた時は驚いた。

「でもどういうこと?そんなこと今までなかったよね?」

「それで疑問に思っている者も多い。なので調査をしてほしいということになった。桜咲家がな」

「それって神宮家の人たちが言ったの?本当に人使い荒いよね」

『まぁ仕方ないだろう。神宮家は、名家の中でも一番上の立場に立っているからな。桜咲家は神宮家にとっては雑用係みたいなものだと思っているだろうな』

おそらく指示を出したのは琉晴だろうと湊は思った。

「どうせ琉晴さんの指示でしょ?」

『そうだろうな。父親は体調が優れないと前に会った時に言っていた』

「姉さん、神宮家の当主とは頑固で馬が合わないって言ってなかった?ちゃんと話せたの?」

しばらく間があった。

『頑固ではあるがよくはしてもらっていた』

「ちょっと矛盾してない?」

『まぁ、あの父親の息子の琉晴もかなり頑固で気が強いからな。だから私と言い合いなんかになったんだ』

湊は、神宮家の長女と次男の晶とは仲がいいのだが、琉晴とは折り合いが悪かった。

「あの時は焦ったよ。父さんと母さんも止めようとしないし」

『面白がっていたんだろうな。本当に仲が悪くないことは向こうの両親も母さんと父さんもわかっていたからな』

「でも普通は止めるでしょ」

あははと渚が笑った。

『でも今となっては笑い話だ。そんなに言うな。それで、真白ちゃんたちが参加するという話だったな』

いつのまにかずいぶん脱線してしまっていた。

「うん。大丈夫そうかな?」

『大丈夫だとは思うが、特に真白ちゃんは一人にさせない方がいい。霊力がずば抜けているから、狙われやすい』

「わかってる。要や隼人、紫音たちも一緒に行くから一人になるようなことは低いと思うけど…真白ちゃんにも伝えておくよ」

湊はそう言うと電話を切った。

「あとは…巫女の道具について、霧人のことについて調べないとな…」

湊が今いるのは、蔵だった。

「でも、ここにあるものだけじゃわからないな。姉さんからもそれについて書かれたものを借りてきてはいるけど…やっぱりあの人に聞くしかないか…」