そんな時家のインターフォンが鳴った。

花蓮はドアを開けた。

そこに立っていたのは、配達員の格好をした若い男だった。

男は何も話さない。

そしてゆっくりとナイフをこっちに向けた。

花蓮の悲鳴を聞いて、旭が走ってきた。

男がナイフを持っているのに気がつくと、花蓮の腕を掴んで、二階に上がった。

二階の一番奥にある花蓮の部屋に入った。

部屋にはクロもいた。

花蓮はクロを抱き抱えて、旭と一緒にクローゼットの中に隠れた。

しばらくすると、足音が聞こえてきた。

少しずつ足音が近づいてきている。

そしてとうとう、花蓮の部屋に入ってきた。

クローゼットが勢いよく開けられ、男がナイフを振りかざした。

最初に刺されたのは旭だった。

そして花蓮にも目を向けてナイフを振りかざした。

そのとき、クロが男に飛びかかった。

男がめちゃくちゃにナイフを振り回して、クロに当たってしまった。

男はふらついて机に頭をぶつけて気を失った。

床に落ちたクロは、花蓮を見て一言鳴いたあと、ぐったりとして動かなくなった。

我に帰った花蓮は、旭に必死に呼びかけた。

しかし、傷が深くもう息をしていなかった。

クロに呼びかけてもピクリともしなかった。

洋服を見ると、真っ赤な血で染まっていた。

視界が揺れて、花蓮は気を失った。

そのあとすぐに両親が帰ってきて、花蓮たちを見つけ、警察と救急車を呼んだようだった。

花蓮が目を覚ますと、花蓮の両親と旭の両親が泣いていた。

花蓮の母親と旭の母親は花蓮を抱きしめて、無事でよかったと言った。

そのあと警察が来て、何があったのか聞かれたが、声が出なかった。

なので紙に書いて説明した。

そしていよいよ退院の日になった。

家に入って、自分の部屋を開けた途端、あの日のことがフラッシュバックして、過呼吸を起こしてしまった。

再び入院になり、医師からは自宅以外のところで生活するのがいいだろうと提案された。

その医師から紹介されたのは、桜咲家というところだった。

花蓮はしばらくの間そこで生活することになった。

「あれからずっと帰ってない…」

両親はいつでも帰って来ていいと言っているが、なかなか決断がつかなかった。

「どうすればいいの…」