「失礼ですが、あなたは霧人と似ている部分があるように思います」

「霧人と?あんなのと一緒にされたらたまらない。俺はこれでも、前世は帝の側近だったんだから」

琉晴にも前世の記憶がある。

前世では帝の一番の側近で、信頼されていた。

「帝の護衛を任されていたんだ。他の優秀な術者と一緒にね。君の前世の寿人は、何でも屋と言ったところかな?」

どこか見下した態度に湊は内心腹を立てていた。

「何でも屋…そうですね。確かに帝からは無理難題を言われたり、あやかしたちの扱いにも苦労しました。でも優秀な従者もいましたよ」

「そうだね。それは認めよう。子供が生まれてもちゃんと育たず、侍女や仕えている術者がかなり減っていたように見えたけどな」

「…」

「別邸に住まわせていた彩葉たちも霧人の術に操られた未影によって殺され、霧人は怒り狂った清華によって呪い殺された。禁忌とされている、呪いの神楽を舞って」

あの時の寿人は矢を放ったのは飛影だとばかり思っていた。

だが外を見たとき、飛影ではないことに気づいたのだ。

「でも実際、妖の力でも借りない限り、霧人を殺すのは無理だっただろうけどね。神楽も合わさって、かなり苦しんだはずだよ」

「…そこまで言うなら、これはご存知ですか?呪い殺され、地獄に落ちた人間は、生まれ変わることはできない。なのに霧人は転生していました。なぜだか教えていただけますか?」

琉晴が興味深そうな顔をした。

「そんなことがあったの?怨霊としてではなく?」

「そうですね。霧人と気づくことはできましたが、なぜ転生できたのだろうとずっと疑問に思っていました。綾女は怨霊の姿だったので」

それを聞いた琉晴は身を乗り出した。

「それは興味深い。君の周りには前世の記憶を持っている子たちがたくさんいるからね。その子達も夏休みの集まりに来るといい。参加を許可しよう」


その後すぐに、琉晴は帰って行った。

「やっと帰ったか…あいつは」

鵺が姿を現した。

「悪い…絶対にあの人からお前の化身を取り戻すから」

鵺は柔らかい表情をした。

「焦るな。気長に待ってやる」

「…ありがとう。そういえばお前、霧人を倒してからかなり話すようになったよな。疲れないのか?」

人間の姿に長いことなっているため、話すのは疲れるのだと前に聞いたことがあった。

「その分睡眠は多く取っている。お前が作ってくれた護符が役に立っているぞ」

湊は、鵺が長い時間休めるように、護符を作っていた。

「それならよかった」



琉晴は、自分の家に帰ってきた。

神宮家の当主が琉晴の帰りを待っていた。

「帰ったのか、ずいぶん遅かったじゃないか」

「うん。少し話が長引いてね。君も集会の間は、問題なくできたようだね。父の体を借りている割には」

「この体は使いやすい。もうしばらく借りるぞ」

(そんなことさせられるか。絶対にこいつの正体を暴いてやる)