「亡くなった…」

知恵はどんな思いであやかしの討伐をしていたのだろうか?

「知恵は自分に仕えていた侍女たちに自分の持ち物を渡していた。いつも知恵たちの無事を祈っていたそうだよ」

自分の主人が、ましてや女性が危険な仕事に行く際、どんな気持ちでいたのだろう。

「清華たちはもちろん悲しんだが、一番ショックを受けていたのが霧人だった」

真白は瑞樹から聞いたことを伝えた。

「前に瑞樹が知世の眷属だったことを教えてくれたんです」

「瑞樹って蛇神の?」

今瑞樹や他の眷属たちの姿は見当たらない。

どこか別の部屋にいるのだろう。

「でも知世に眷属がいたっていう記録は見当たらなかった。知世が隠していたのかもしれないし、書かれなかったか、もしくは紛失したかのどれかだろうね。続きを聞かせてくれる?」

「それで知世を殺そうとしていた綾女を止めようとして綾女に封印されたそうです。綾女はおそらく霧人が知世と話していたことが許せなかったんだと思います。これは私の推測ですけど、霧人が知世のことを庇って綾女を刺したんだと思います」

それを聞いた湊が考えこんだ。

「霧人は、綾女に邪魔者は殺しても構わないと言って聞かせていた。うーん…霧人は何か重要なことでも知世から聞いていたのかな。俺もよくわからなかったんだよね。なぜ霧人が母親にそう言われただけでたくさんの人を殺していたのか」

湊もわからない部分があるようだ。

「霧人のことはもう少し詳しく調べてみるね。話を戻すと、清華がそんなことをしたのは、他の侍女たちを霧人が死に追いやったのが原因と言われているんだ」

そこまで話していた時湊のスマホが鳴った。

「あ、父さんからだ。ごめんね。出てもいい?」

「どうぞ」

真白に断ると、湊は電話に出た。

「もしもし。うん、え?今から?…わかったよ」

湊はスマホを耳から離した。

「ごめん。真白ちゃん。家に急いで帰って来いって連絡が入って…」

話はまだ途中だが、急用なら仕方がない。

「大丈夫ですよ。色々聞かせていただいてありがとうございます」

「ごめんね。話をしたいって言ったのは俺なのに」

湊は申し訳なさそうに帰って行った。



湊が家に帰ると、そこにいたのは神宮家の次期当主だった。

「久しぶりだな。湊」