「はい。高校生くらいの男女の二人組で、自分たちのことを結界師と陰陽師と言っていました。あと、先祖が帝に仕えていたって…」
「その陰陽師って名乗ってた人は何か術を使ったりしてた?」
「確か、黄色い護符を使って妖を呼び出していました。獣みたいな」
湊は顎に手を当てた。
「…もしかしたら、神宮家と関わりがある術者かもしれない」
「神宮家って、晶さんの実家ですか?」
晶は、神宮家から桜咲家に婿入りしたと聞いている。
「どうしても桜咲家と繋がりを持ちたかったみたいだ」
真白は、少年から聞いたことを港にも聞いた。
「あの人たちが言ってたんですけど、桜咲家は前に何かしたんですか?渚さんが晶さんと結婚したのは、過ちを繰り返さないための見張りも兼ねてるって…」
「それは、具体的にはどんなこと?」
「従者の惨殺と巫女の呪術の使用って言ってました」
湊は腕を組んで考えた。
「従者の惨殺は霧人に仕えていた侍女を殺害したことを言ってるんだと思う。呪術の使用は…霧人を始末すように帝からの命令があった。でも寿人は、最後まで話し合いでどうにかできないかと考えていたんだ。それでもダメな時は、陽瑛に矢で霧人を殺すように言っていたらしい」
そこから表情が曇った。
「…でも霧人に弓矢を放ったのは鵺だった。その時に一緒にいたのが清華だったんだ」
真白は嫌な予感がした。
「清華は呪いの込められた神楽を舞っていたんだ」
震える声で真白は尋ねた。
「なぜ、そんなことを…」
「少し清華のことについて話すね。清華は元は知恵の侍女として仕えていたんだ。侍女は他に三人いた」
知恵は、寿人の実の姉だ。
「でも、父親である篤人が亡くなって、帝から任されていた仕事ができなくなってしまったんだ。それを代わりに行っていたのが知恵だった」
「寿人や母親である知世が代わりをすることはできなかったんですか?」
「その時、寿人はまだその仕事ができる年齢ではなかった。知世は、血を受けついでいないから、代わりをすることは無理だった。それに加えて、帝の命令を受けて仕事を行うのは、男のすることだったんだ」
真白はここで疑問に思った。
「でも知恵は女性ですよね?どうやって仕事を行っていたんですか?」
「帝にその仕事をするのを認めてもらうために、剣術を身につけたり、男装をしたそうだよ」
「その仕事ってなんなんですか?」
「あやかしの討伐だよ」
そんな危険なことを女性が…
真白は胸が痛んだ。
「まさか、一人で?」
「陽瑛と未影と新羅の三人が一緒についていっていた。何度目かの討伐の時に、知恵は亡くなってしまうんだ」