あれから五年ほど、夜叉は生きることができていた。

「あの首飾りがどうなったのかはわからないけど、俺はあの時みんなに命を救われたんだ。今度は俺がみんなが苦しまないようにしたい」

そう言って、隼人は笑った。


真白は紫音たちがいる教室に着いた。

「手伝いにきたよ」

そこにいたのは鵺だった。

「鵺、ここに紫音たちいなかった?」

「…あいつらならついさっき出て行ったぞ」

でも、ここにくる途中ですれ違わなかった。

「おかしいなぁ…」

そのとき、鵺が窓を見た。

「…誰かいるな」

真白が窓を見ると、人が立っているのが見えた。

「何であんなところに人が…」

近づいて見ると、宙に浮いている。

「え⁈」

高校生くらいの少年と少女だ。

「みいつけた」

そのまま歩いて、窓をすり抜けた。

「何なの?あなたたち」

真白は鵺の後ろに隠れた。

「お前たち、結界師だな」

少女がふふっと笑った。

「半分正解。私が結界師で、こっちが陰陽師」

少年が札を手に持っている。

(あれ、要の持ってるのと違う)

要が持っているのは白い札だが、この少年が持っているのは黄色い札だった。

「これは護符だよ。見たことないか?妖を呼び出すんだ」

少年の護符が光り、獣のようなものが出てきた。

「お前にもいるだろ?眷属」

真白は首にかけてある首飾りを握った。

少年の獣のような妖が飛びかかってきた。

「朱里!」 

何とか避けて、真白は朱里を呼び出した。

「狗神か。あと三人いるよな。九尾の狐、蛇神、鬼神」

(何でこの人たち、そんなこと知ってるの?)

朱里が噛みつくと、獣のような妖は消えた。

「なんだこいつらは」

そう言ってから、何かを思い出したように目を見開いた。

「…お前たち、あの時の…帝の手下の術者か」

少女が答えた。

「今は違うけどね。それは私たちの祖先」

「桜咲家は帝の命に背いてそこにいる鵺を屋敷に住まわせていたんだろう?」

(帝の命に背いた?)

「他にも従者の惨殺や巫女による呪術の使用もあった」

「さっきから何言ってるの?」

「お前それでも桜咲家の人間か。こんな有名な話も知らないで」

呆れたように少年が言う。

真白はそんなことはまだ聞かされていなかった。

「神宮家が桜咲家の人間と結婚したのはあんな過ちをもう起こさせないための見張りも兼ねてるのよ」

おそらく渚のことを言っているのだろう。

何も言えなくなっている真白に少年が言った。

「今年の夏に退魔師や術師が神宮家に集まる。秋に行う百鬼夜行と神儀りの役割分担を決めるのと、次期当主の顔合わせも兼ねてな。お前にも参加資格はある。桜咲湊にでも頼んで連れてきてもらうといい」

そう言って、消えてしまった。

「何だったの?あの人たち」