「あいつ、話題そらしてなかったか?」

気のせいだろうか?



渚は、スマホを机に置いた。

「もし、慧の言っていることが本当だとしたら、絶対に隠し通さなければ…私が知恵の生まれ変わりだと神宮家知られる訳にはいかない。なら最初から知らない方がずっといい」

椅子に体を預けて、窓を見た。

渚の部屋からは、河童のいる池が見える。

ちょうど河童が顔を見せた。

「いいな。お前は気ままで」

「クワ?」

よくわからないと言うように、河童が首をかしげた。

「今年も何も起こらず、終われるといいんだが…」



この日、真白たちの学校では三年生の送別会が行われていた。

卒業式の前に在校生たちが企画したものだ。

この日は三年生が全員登校してくる。

在校生もこの日は授業がなく、卒業生を祝う。

「授業がないなんて珍しいよね」

隼人が真白に言った。

「この学校の伝統行事なんだって」

真白の学校は学校行事が盛んな学校で、学年ごとにいろいろな行事が体験できた。

「文化祭の時も学年ごとの個性がかなり出てたし」

「二年生は、修学旅行の思い出の発表で金閣寺とかダンボールで手作りしてたグループもあったよね」

「今年は工作とか絵がメインの文化祭だったかも」

三年生は絵の展示をして、真白たちの学年はアリスの背景がかなり評価された。

「確かに」

「そういえば、叔母さんと話せた?」

「うーん。まだ難しかったけど、時間をかけてゆっくり話してくつもり」

「そっか。でも前より表情が明るくなったね」

「そうかな?」

真白は自分の顔を触った。

「真白、隼人、こっちにきて手伝ってくれない?」

要がジュースの入ったダンボールを持っている。

「すごい量」

生徒と教師の全員分あるようだ。

オレンジジュースにサイダー、お茶などいろんな種類がある。

「紫音たちが別の教室でお菓子の補充もしてるから。真白、様子見てきて」

「わかった」

真白は体育館を出て行った。

「真白と一緒じゃなくてよかったの?」

隼人は要を見て行った。

「これ、重いし。お前と話したいこともあるから」

隼人は首を傾げた。

「話したいこと?」

「紫音の邪気を吸い取っただろ」

「あぁ。あの後紫音にすごくお礼言われた。ジュース奢ってくれたし」

「術を使うと寿命が削られるって本当か?」

隼人の表情が曇った。

「…それ、誰から聞いたの?」

「俺の式神が教えてくれた。本当なのか?」

「大したことないよ。そんなに頻繁に使うことなんてそうそうないだろうし」

「それは、前世と関係してるのか?」

隼人は首を振った。

「たぶん関係ない。でも本当のことはわからないんだ。ほんとは俺は、白夜たちが亡くなってすぐに死ぬはずだった。それを琥珀があの首飾りに白夜たち五人の霊力を消えないように留めてくれたんだ」