慧は、渚と連絡を取っていた。

「夏休みに京都に集まれ?」

春先の季節にいきなり連絡がきたと思えばとんでもないことを言われた。

『私も驚いた。集会で決まったことらしいが…』

「それって、どれくらいの人が集まるんだ?」

『術師や退魔師の名家はもちろん、その家に仕えている家も来るように言われているそうだ』

慧は疑問に思った。

今までそんなことは一度もなかったからだ。

『特に今年は百鬼夜と神儀りが重なっているそうだ。よって、その分担を決めるのと、次期当主の顔合わせがあると聞いている』

「だから特別なんて言ってたのか」

『いや、それは関係ない。私が言っているのは百鬼夜行の事だけだ』

話によると、この二つは主催する家が決まっているようだ。

『神儀りを主催しているのが、玄道家、百鬼夜行を主催しているのが神宮家だ。お前は参加したことはないと言っていたな』

「まさか、俺も参加するのか?」

『当然だ。千輝くんも参加していなかったそうじゃないか』

一体そんなことをどこから聞きつけるのか。

正直なところ、慧は人の多い場所は苦手だった。

「その時期はうちの学校は修学旅行だぞ。どうやって参加しろって言うんだ」

『安心しろ。支障はないようにする。集まる場所は決まり次第また連絡する』

ずいぶんと簡単に言うものだ。

「それはわかったが、この前の話の続きだ」

『あぁ、私の前世が知恵だって言う話か?そんな確証はどこにある?』

湊とは違い、渚は前世の記憶を持っていない。

だが、慧には知恵だと言う確信があった。

「まずその話し方だ」

『話し方?』

「知恵は、男装をして討伐に行くと決めた日からそんな話し方をしていた。渚は何でそんな話し方をしてるんだ?」

『これは、神宮家で修行をしていた時に、強い心を待てと言われた。男にも負けないくらいのな。それでこの話し方が抜けなくなったんだよ』

慧の記憶と合っていた。

知恵も髪を切って服装を変えて、男のような話し方を心がけていた。

『もういいか?話ならまた今度すればいい。慧だって、他にやることもあるだろう?』

もうすぐ、卒業式が近づいてきた。

学年は違うが、教員もいろいろ準備がある。

『もうじき、湊もこっちに来るからな。真白ちゃんたちも、寂しくなるだろうな』

「そうだな…」

湊は、京都の大学に行くことが決まっている。そのほかにも、他の術師や退魔師と関わることも多くなるだろう。

『そんなわけで、私は今忙しい。またな』

「おい待て…切れた」

慧が言い終わる前に通話は切れてしまった。