(柏木真白…)

要はあの手袋に書かれた名前と同じことを思い出した。

「この子が、彩葉の生まれ変わりなんですか?」

「そうだ」

すごい偶然だ。

あの時の女の子が彩葉の生まれ変わりなんて。

「俺、この子に会いたいです」


今思えば一目惚れだったかもしれない。

会ってみたら彩葉と全く同じ顔をしていた。

屋敷にきたばかりの真白は、最初は戸惑っているように見えたが、意外にもあっさり状況を受け入れていたように見えた。

だが、要の告白を受けてくれたあとは、どこか浮かない顔をしていた。

おそらく、恋愛経験があまりなかったのだろう。

まだ高校生なのだからそういう子の方が多いのかもしれない。

実際、付き合ってみなければわからないことも多い。

だから、ゆっくり知ってもらうことにした。

「前とは、違うよな」

ふと、机にある札を見た。

まだ式神も、上手く言うことを聞いてくれない。

唯一の使いこなせるのは、真白を迎えに行かせた式神だ。

『ケッ、白夜ならお前くらいの年でほとんどの式神を使役できてたってのになぁ』

『そうよそうよ。本当に白夜の生まれ変わり?』

「そんなこと、俺だってわかってるよ…頼むから静かにしてくれないか」

たまに勝手に出てきては、こうして嫌味を言う式神もいる。

「式神を使わない術は使えるのに、何でなんだ…」

『要、焦ることはありません。この子たちはひねくれているだけですから。それに他の子たちだって巫女の術具を使いこなせてはいない』

『しっかし、隼人っていうガキは何やってるんだ。邪気を自分の中に取り込んで。あんなもん人間の体に取り込んだら寿命を削られるぞ』

「は?今なんて言った?」

衝撃的な言葉が要の耳に聞こえた。

『あのガキは呪術師だろ。だから邪気を自分の中に取り込むこともできるしそれを相手に移すこともできる。彩葉の呪いだって霧人が死ねば自動的に解除されたのに、わざわざ自分の体に移して無駄死にしやがった』

『まぁ簡単に言うと、術を使うごとに寿命が減るのよ』

「それ、本気で言ってるのか?」

『こんな趣味悪い冗談言うほど、ひねくれちゃいねぇよ』

要は、紫音たちたと同じように隼人も霊力を使うと体力を消耗するだけだと思っていた。



真白は、学校が休みの日に、春香と共に本条家に帰ってきた。

ガチャッ、と玄関のドアを開ける。

「ただいま…」

春香が言うと、家には春香の父がいた。

「おかえり。春香、真白」

「ただいま叔父さん。叔母さんは?」

春香の父は、眉を下げた。

「すまないな。千早は今、買い物に行ってるんだ。今日は、なにか話があってきたんだろう?」

事前に、春香が父に伝えておいた。

「千早が帰ってくるまで、待ってるか?」

二人は首を振った。

「その前に、あの鍵がかかってる部屋について教えて欲しいの」