「何、これ…」

中に入った真白たちは絶句した。

屋敷の中は床は抜け、蜘蛛の巣があちこちにあった。

「これで住めないんですか?」

真白は湊に尋ねた。

「ううん。これは掃除とか工事でどうにかなるからね。問題はこの奥に進んだところなんだ」

さらに奥に進むと、邪気で溢れていた。

「何だ…この邪気の数は…」

隼人(はやと)が顔をしかめた。

「見ての通り、邪気が大量にいるんだ。来るたびに増えてるから祓っても祓ってもキリがなくて」

「何か原因があるはずだ。それはわかっているのか?」

(けい)が尋ねた。

「おそらく、あやかしか怨霊の仕業だと思うんですが、姿を見せないんです」

なぜ姿を現さないかはわからないという。

「強い術で姿を見えなくしているのかもしれない。屋敷の外を探すんだ」

一度、みんなで外に出て何かないか探した。

しかし、特に怪しいものは見つからなかった。

「…どうなってるんだ」

要がつぶやいた。

もう日が暮れ始めていた。

「今日はもうこれくらいにしよう」

湊が声をかけて、宿泊する予定の旅館に向かった。

男子と女子に別れて、部屋をとっていた。


「え?宿泊客は他にいない?」

慧が受付で手続きをしている声が聞こえてきた。

「こんなに綺麗な旅館なのに?」

「しかも冬休み中だぞ。客が俺たちだけなのはおかしい」

結奈と紫音が言った。

違和感を感じながら部屋に向かった。

「すごい!夜景が見えるよ」

天音(あまね)が障子を明けて声をあげた。

「本当だ。綺麗」

花蓮(かれん)も窓を眺めた。

「でも不思議だよね。何で私たち以外お客さんいないんだろう」

「うん…」

真白は嫌な予感がしていた。



慧は、旅館を出て風に当たっていた。

『飛影、私に剣を教えてくれないか?』

慧は頭を抑えた。

「何だ…?」

頭に女性の姿が浮かんだ。

綺麗で凛々しい女性だった。

「誰だ、あれは…」

「高嶺先生」

湊がやってきた。

「あぁ、どうした?」

「みんな夕食に行くそうです」

「わかった」

慧は、宿に戻って行った。


夕食は、大広間で食べるようだ。

「なんか私たちだけだと寂しく感じるね」

真白が辺りを見回して言った。

「ここは老舗の旅館で、伝統があるみたいだね」

千輝が言った。

そのとき、真白は誰かの視線を感じた。

だが、真白たち以外に人はいない。

「真白?」

要が気づいて話しかけた。

「え?なに?」

「どうかしたの?」

「ううん。何でもない」

夕食を食べ終えて、部屋に戻ろうとした真白は大きな鏡があることに気がついた。

(鏡…)

自分の姿を写してみるが変わったところはない。

「よかった。この鏡は何ともないみたい」

安心したとき、鏡から手が出てきた。

「え⁈」

真白はそのまま鏡に引きずりこまれた。