冬休みが終わり、三学期が始まって何日か経った。

あと二ヶ月もすれば、三年生が卒業式を迎える時期になった。

進路が決まっている三年生は自由登校になるため、三年生の人数は少ない。

「生徒会長、きてたんですか」

真白は生徒会室に用事があり、やってきた。

「ここにいると落ち着くからね。それと俺はもう生徒会長じゃないよ」

「あ、そうでしたよね」

三学期に入ってすぐ、生徒会や委員会の引き継ぎが全て終わった。

「これからは名前で呼んでくれないかな。ほとんどの人たちがそう呼んでるし」

確かに他の生徒会役員たちや生徒で湊のことを生徒会長と呼んでいる人は少ない。

「…湊さんに聞きたいことがあってきたんです」

「なにかな?」

「私、両親のことをほとんど何も知りません。桜咲家のことも…だから湊さんのご両親なら父と母のことを知っているんじゃないかと思って…」

湊は腕を組んだ。

「一度本条さんの家に戻ってみたらどうかな?」

「でも…」

真白は困惑していた。

「…私は叔母さんに嫌われているので、戻れません」

「話してみないとわからないこともあるんだよ。桜咲家について教えるのはそれからだ」

真白を残したまま湊は生徒会室を出た。

「そこで何してるの?」

物陰から春香が出てきた。

「ここを通ったら話し声が聞こえてきたので」

「本条さんは、どこまで知ってるの?」

「え?」

「何かお母さんのこと、知ってるんでしょ?」

春香は父から聞いたことを話した。

「それを知ったのはいつ?」

「最近です。今まで聞かされていませんでした。生徒会ちょ…湊さんは知ってたんですか?」

「少しはね。何か家にその妹さんの遺品とかないの?」

春香はしばらく考え込んだ。

「一部屋だけ鍵がかかってて入れない部屋があるんです」

「まずはその鍵を探すところからかな。それと真白ちゃんを本条さんのお母さんと話をさせた方がいい。真白ちゃんにもそう言っておいたから」

「そうですよね。私からも真白とお母さんに伝えてみます」

何分か経って、生徒会室の前を隼人が通りかかった。

ちょうど真白が生徒会室から出てくるところだった。

「真白」

「隼人、いま帰り?」

真白が浮かない顔をしていることに気づいた。

「何かあったの?」

「生徒会長…湊さんに両親のことを聞こうと思ったんだけど、その前に叔母さんと話をした方がいいって言われて…」

「そうだったんだ…でもいつかはちゃんと話さなきゃいけないんじゃないかな?」

「うん…それはわかってるよ」