「もうお昼近いからここでお昼にしようか?いいですよね?慧さん」

「そうだな」

バスと電車を乗り継いで、かなり時間がかったため、みんな空腹だった。

「電話終わりました」

春香もちょうど戻ってきた。

注文を待っている間、話をしていた。

「あの姿見は、置いてきたんですよね?」

四人がけのテーブル席に真白、春香、要、湊が座っていた。  

「うん。もう勝手に移動したりはしないだろうけど…いくつか気になることがあるんだ」

「なんですか?」

真白と春香と要は耳を傾けた。

「一つは時代によって巫女の道具の数や道具自体が違っていること。姉さんの話と本の記述、蘇芳も違うことを言ってたって先生たちが言ってた。俺たちの記憶でも噛み合わない部分があるかもしれない」

確かに渚は形は変わっているものもあると言っていた。

彩葉が自分の霊力で作り出したものもあったり、あやかしの力も加わっているものもあると。

「じっくり紐解いていけば、何かわかると思うんだけど…かなり時間がかかりそうだから」

全て調べるには骨が折れそうだった。

「あの化粧道具の持ち主も分からずじまいですしね」

春香が口を開いた。

「二つ目がそれだ。あの化粧道具は、結局誰のものかわからないままだ。綾女のものかと思ったけど、気配が違うんだよね」

真白は姿見と化粧道具を見た時、頭痛がした。

(私はなんとなくわかるけど、まだ確証があるわけでもないし…)

あれはおそらく知世のものではないかと真白は考えていた。

微かではあるが、あの化粧道具を見て頭痛が起きたときと知世が真白に憑依したときの気配が似ていたのだ。

(それに瑞樹に聞きたいこともあるし)

瑞樹はかつて、知世の眷属として一緒にいたのだろうか?

綾女が瑞樹を見て知世の眷属と言っていた。

他の眷属たちについても真白はまだまだ知らないことが多かった。

少し前まで、両親のことも初めて知ったことがあったのだ。

真白は少しずつ自分のことについて、自分を取り囲む人物たちについて知っていきたいと思った。