屋敷に戻ると、湊がいた。

「姉さん、今までどこに…」

湊の視線が勾玉に移った。

「綾女という怨霊がここに封印してある。晶が帰ってきたら、除霊をしてみる」

その時、真白の頭の中に声が響いた。

『私の声が聞こえるか?娘』

「え?」

真白は頭を抑えた。

『お前と意思を通じ合えるようにしておいて正解だったな。自我も失わず自分を保てている』

「真白?どうしたの?」

要が心配そうにしている。

「綾女の声が聞こえる…」

「え⁉︎」

その場にいる全員が驚いた。

「そんな。確かにこの中に封じたはず…」

渚は動揺を隠せない様子だった。

『ふふ。あの時は危なかったな。しかし初めから狙っていたのはお前だ。一番霊力が強かったからな。私の式神たちを倒し、屋敷を出て行く時にお前の体に少し入り、観察していた』

(あの時の背中の違和感はそれだったんだ)

『しかし役割には恵まれなかったな。またすぐにあの屋敷に戻ってくるとは思わなかった。あの時完全にお前と意思疎通ができるようになった』

(あなたの目的は何なの?)

真白は心の中で尋ねた。

『あの女と話がしたい』

(それって誰のこと?)

『知世だ。あの女は、私から最愛の人を奪った』

「真白?綾女はなんて言ってるの?」

要が真白の肩を掴んだ。

「話したい人がいるって」


真白がその名前を口にすると、湊と渚は固まった。

「それは、桜咲家の初代の巫女の名前だ」

「同時に寿人の実の母親でもある」