瑞樹が要を止めた。

「おまえだけでは無理だが、真白の血を札に付着させれば、力が強まるかもしれないな」

「私の血?」

「そうだ。少量で構わない」

真白は親指に歯で傷をつけて、血を札に擦り付けた。

「それを邪気に向かって投げろ」

要が瑞樹に言われたとおりに邪気に向かって投げた。

すると、邪気は一瞬でいなくなった。

「貴様ら…!」

今度は、真白に向かって邪気が迫って来た。

(このままじゃ…!)

「朱里!」

真白は邪気に飲み込まれる寸前で首飾りに向かって叫んだ。

「真白!」

要が手を伸ばしたが、間に合わなかった。



渚は、桜咲家の本家に急いでいた。

「乗れ!」

朱里が渚を背中に乗せた。

「見えた!」

屋敷が見えてきた。

渚が屋敷の中に入ると、綾女がニヤリと笑った。

「お前、あの女の娘に似ているな。霧人をよくもたぶらかそうとしてくれたな」

「なんのことだ?要くん、真白ちゃんはどこだ」

綾女の話を聞き流すと真白の姿がないことに気がついた。

「真白は…あいつの邪気に飲み込まれて…」

渚は綾女を見た。

「あれは…怨霊だな。深い憎しみや嫉妬…負の感情の塊だ。これほど強いのは珍しいな」

「憎い…憎い…憎い!!」

綾女の顔が鬼の形相になった。

「このままだと真白ちゃんも危ない。一旦ここに入ってもらうしかないな」

渚は、勾玉を出した。

それを綾女に向けた。

「お前にはここにしばらく入ってもらう」

「うあぁ!!!」

綾女の悲鳴が上がりそのまま勾玉に吸い込まれた。

「真白!」

床に真白が倒れていた。

要が駆け寄った。

真白の瞼が微かに動いて、目を開けた。

「要…」

「大丈夫か?」

「うん。平気」

渚も駆け寄ってきた。

「よし。早くここから出るぞ」

真白たちは、渚の家に戻った。