君と二度目の恋をする  あやかし屋敷

渚が説明をしている途中で、湊と春香がやってきた。

「姉さん、ちょっといい?」

「どうした?」

「古い書物を見せてほしいんだ。桜咲家の」

「確か書庫にあったはずだ。隼人くん、頼んだよ」

そう言って、渚は行ってしまった。

琥珀が、じっと隼人を見ていた。

「何してるんだ。行かなくていいのか?」

「お前、よくそんな体で動けるな」

「は?何言ってるんだ」

琥珀が隼人の近くにやってきて、隼人の胸のあたりに前足をかざした。

「…体が楽になった」

「やはり邪気を吸い取って具合が悪かったんだな。意地を張るところは前と変わらないな」

琥珀は、隼人の前世だった夜叉(やしゃ)と長く一緒にいたことがある。

「あの時は世話になったな」

「今のお前はまだ力のコントロールができていないあやふやな状態だ。他の奴らもな」

隼人たちは、自分の霊力の使い方がうまくないことは十分にわかっている。

実際に巫女の道具を使っている紫音たちは長い間使うと体に負担がかかる。

「大きな力を持っていてもそれを制御できなければ使うことはできないぞ」

そう言い残して、琥珀は行ってしまった。 


「ここは…」

眠っていた紫音は目を覚ました。

体を起こすと、痛みが走った。

「いっ…!」

それに顔を顰めた。

「よかった。目を覚ましたようだな」

渚が部屋に入ってきた。

「あなたは…」

「私は桜咲渚。桜咲湊の姉だ。他のみんなもここにいるから心配するな」

「そうですか…」

「体を動かせるようになったら隼人くんにお礼を言うといい。君が受けた傷から邪気を吸い取ってくれていた」

「おい」

姿を消していた朱里が現れた。

「どうした?」

「真白たちに何かあったようだ」

渚の顔つきが険しくなった。

「わかった。行こう。君はもう少し寝ているんだ」

渚たちがいなくなったあと紫音は横になった。

(また何かあったのか…?)

心配になりながらも、紫音は眠気に勝てなかった。


別室には、天音、結奈、花蓮がいた。

三人とも昨日には目を覚ましていたのだが、渚にまだ休んでいるように言われたのだ。

「…紫音、怪我大丈夫かな…」

花蓮がつぶやいた。

「手当はしてもらったみたいだし、きっと大丈夫だよ。花蓮だって怪我してるんだから、無理しゃだめだよ」

隣に寝ている天音が言った。

「私たちは幸い怪我はしなかったけど、結構危なかったかも」

端の方で寝ていた結奈が言った。

「あの人たち、何だったんだろう?邪気で攻撃してきたし」

「多分、誰かの式神だったのが主人が負の感情に飲まれたからああなったんだと思う」

花蓮が説明した。

そのとき、ドアが開いた。

「ずいぶん元気になられたようでよかったです」

着物を着た女の人が入ってきた。