確かに真白は、春香の家で暮らしていた時は無関心でいられることの方が多かった。

でも、真白はあまり気にはしていなかった。

「…連絡してくるね」

「俺も 家に連絡しなきゃいけないから一緒に行くよ」

そう言って、二人は歩いて行った。

(春香、どうしたんだろう?)

「真白は、怪我とかしてない?」

要が話しかけてきた。

「うん。私は大丈夫」

「よかった。いなくなったって聞いた時は驚いたけど」

あのとき、鏡を見たらいきなり白い手が出てきたのだ。

まだ真白の腕には掴まれてできた手の跡が残っている。

「…最近、鏡を見ると歪んだり、女の人が見えたりするの」

「え?」

「これって、何でなのかな」

要は考え込んだ。

「たぶん、真白の霊力に引き寄せられているんだと思う。真白の霊力は彩葉と同じくらい強いから。霊とかも普通の人間として見えてることとかなかった?」

真白がまだ両親と暮らしていた時は、頻繁に霊を見ていた気がする。

幽霊とは気づかず、一緒に遊んでいたこともあったほどだ。

今はそういうものは少なくなった方だとは思う。

「小さい頃は頻繁に見てた気がする。今は見分けがわかるようになったから近づかないようにしてるけど」

「…そっか。でもその鏡に映る女性は何なんだろう?何かあったら言ってね」

「ありがとう」

要は優しい。

(なのになんでこんなに不安なのかな…)

あの時、よく考えずに返事をしたつもりはない。

「真白」

要が真白の頬を両手で包んだ。

「もしかして、俺と付き合ってるの、不安?」

「えっ」

(見抜かれてた…?)

「…うん」

真白はゆっくり頷いた。

「やっぱり。そうじゃないかと思ってたんだ。俺といるとき、居心地悪そうにしてた時があったから」

「えっと…ごめん」

「謝らなくていいんだよ。ゆっくりでいいから、俺のことを知っていってほしい」

その言葉に真白は少し胸が軽くなった。

「うん。ありがとう」


 

春香は母親に電話していた。

「だから、帰るのが遅くなりそうなの」

スマホから不機嫌な声が聞こえてきた。

『春香、最近出掛け過ぎじゃない?何してるの?』

「友達と旅行に…」

『それってどんな子達なの?』

「みんな優しいよ。だからそんなに心配しなくても大丈夫だから」

しばらく沈黙が流れた。

「お母さん?」