君のいない夏

「えっとね、私ね。
虚血性心疾患なの。」
「そうなんだ。
僕の親、腕だけはいいから、
安心して。大丈夫だから。」
「え〜と。
でも…私の家、あんまりお金がなくて、
まぁいわゆる貧乏なんだ。
だから、手術が受けられないかもしれないの。」
嘘をついた。
貧乏ではない。
真実は伝えられない。
病院関係者になんて、
口が裂けても言えない。
お母さんに病気のこと伝えていないなんて…。

心の整理が落ち着いた頃、
佐藤が話し出した。
「そうなんだ。
でも、手術しないと治らないよ。
親に相談してみる。
ついてきて。」
えっ、だめ。
「手術、したくない?
ごめん。迷惑だよね。」
こんなに人のために動ける人、
初めて見たかも。
「うぅん。
したいけど、できないよ。
病院の人たちに迷惑、かけれないよ。」
違う。
お母さんに病気のことがバレると困るからだ。
ダメ。
お母さんに病気のことは話してない。
知っているのは親戚の叔父と叔母くらい。
ダメ。
と思った次の瞬間私は意識がなくなった。