君のいない夏

走った。すごい走った。
でも、いない。
走ると、病気が悪化しちゃう。
でも、話したい。
だから見つけたい。
その思いで必死に走った。
「あっ。あ〜。」
こけちゃった。
間に合わなかったか〜。
話してみたかったな。
学校じゃ全然話せないんだよね。
あ〜あ。
また失敗。
私のいけないところ。
いいところで失敗。
いつもそう。
あ〜あ…
「大丈夫ですか?」
「はい。だいじょ…。えっ」
「高橋灯里!?」
「佐藤夏樹?なんで?」
声が重なった。
私は佐藤の名前は知っていたけど、
佐藤が私の名前を知ってきたことにびっくりした。
すると、先に佐藤夏樹が話し始めた。
「なんでここに?
うちの病院に用があったの?」
どう言うこと?うちの病院?
とりあえず思ったことを伝えてみた。
「うちの病院?」
「あぁ。
僕の親がやっている病院だけど?」
「あ、そうなんだ。
そう。病院に行ってきたよ。」
「へ〜。うち、心臓外科だけど、
どっか悪いの?」
どうしよう。
話す?まだ、家族以外?先生以外?
誰も知らない。
知ってる人が1人ぐらいいても大丈夫かな。
でも、嫌がられる?
嫌われちゃう?
「…」
何か言わないと。
どうしよう。
「無理に言わなくていいよ。
ごめん。僕が変なこと聞いたから。」
その瞬間、この人なら安心できる、
     信頼できると思った。
なんかあったらその時まで。
とりあえず信じてみよう。