君のいない夏

梅雨になった。
外を眺めていた。
「集中して。
よそ見しないでください。」
夏樹が言った。
敬語に戻っている。
気まずい雰囲気。
私がいけないのはわかっている。
でも、そんなに怒らないで欲しかった。
謝らなきゃ。
謝りたいけど…。
「今日は終わりにしましょう。」
えっ、もう終わり?
1時間もやってないよ?
あっ。夏樹が行っちゃう。
なんか言わないと。
「夏樹。……」
言うこと考えてなかった。
ええっと、ええっと。
「なんですか?
早くしてください。」
「あのさ、ごめんね。
いろいろ。うんっと、ごめんね。」
同じことしか言ってない。
迷惑だよなぁ。
「灯里、食べ歩きしましょう。」
「えっ。」
予想外の答えに戸惑った。
「時間ありませんか?
無理にとは言いませんが。」
「行く。行くよ。行こう。」
気まずいけど、なんか嬉しい。
不思議な気持ちだった。