12月。
夏樹と病室で雪を見ていた。
「初雪だね。
夏樹は嫌いだと思うけど、」
「えっ、なんで?
そこまで嫌いじゃないけど、」
「なんとなくだよ、なんとなく。
名前に夏ってついてるから、
夏が好きなのかなって。」
「ははっ。
夏生まれだからだよ。
見て。
今日は、読書日和だよ。」
たわいのない会話。
幸せを実感する時。
「そうだね。
私、本読まないけどね。」
会話が止まった。
お母さんと話している時は
何か話さないとって考えてしまう。
夏樹といる時はそんなことは考えない。
安心できる。
いいこと思いついた。
「ねぇ、夏樹。
私と悪いことしない?」
「えっ、何言ってんの。
悪いことって自分で言ってんじゃん。
悪いことは悪いこと。
わかった?」
「ん〜。悪いことしたい!
クリスマスだよ。
年に一度のクリスマス!
冬といったらクリスマス。
クリスマスと言ったら?」
「冬。」
「違うよ。
イルミネーションでしょ。
こっそり抜け出して、
駅のイルミネーション見に行こうよ。」
「ダメ。また、病気が悪化したらどうするの?
倒れるかもしれないんだよ。」
「私のお願い、聞いてくれるよねぇ?」
「っ… わかったよ。
30分で帰ってくるからね。」
「やった〜。」