「あ! その帽子貸して」

「こ、これか?」

 皇子が被っている黒く尖った帽子を借りる。

「これで、叩くものと被るものがそろったね。まずジャンケンをして勝ったらこれで頭を叩く。負けたらこれを被って頭を守る」

「あ、頭を叩くのか!?」

「軽くね」

 驚いている皇子はさて置いて、ゲームを始める。

「叩いて被ってジャンケンポン!」
 
 最初のジャンケンで勝利した私は、ハエ叩きで皇子の頭を叩く。ワンテンポ遅れて帽子を被ろうとした皇子が固まる。

「やった! 皇子遅っ!」

 思わず爆笑してしまう。こんな時までこの人は優雅に帽子を被ろうとしていた。