「翳(さしば)は、お顔を隠すためにございます」

「顔を隠す？」

「優花様は高貴な御方故。お顔を隠してくださいまし」

　兎の化身って身分が高いの？わらないけれど浜田から聞いたことがある。
　平安時代など高貴な人は直接顔を見せてはいけないから、今でいうレースのカーテン越しに会話をしていたと。だけどこの時代はセルフで顔を隠せってこと？

「……わかりました。ありがとうございます」

　とりあえずお礼を伝えると五月雨さんはニッコリと微笑む。その優しい笑顔は、やっぱりどこか麻美に似ていた。