キョロキョロと辺りを見渡しても麻美も浜田もいない。藤白神社もない。目の前にあるのは質素な造りなのに、やけに大きなお屋敷。知識のない私が簡単に表現すると茅葺き屋根でできた大きな平屋。青年はそのお屋敷の縁側のような場所に腰掛けている。そして、私が倒れているのは屋敷の敷地内。完全に不法侵入。それよりも……。

「……あの、ここはどこですか?」

「ナニワノナガラノトヨサキノミヤ」

「は?」

 思わず、ポカーンと口が開く。
 この人は、異国の方?カタカナにしか変換できない言葉に戸惑う。それに無駄に長いし聞いたこともない。

「……セッツノクニだが」

 相手は相手で、怪訝そうな顔をしている。

「私は、和歌山の藤白神社にいたんだけど」

「ワカヤマ????」

 その顔を見て悟る。 ダメだ。完全に通じていない。