「優花ちゃーん! 順番だよー!」

 遠くから麻美の声が聞こえる。返事をしようと口を開いたけれど漏れたのは空気だけ。そしてこの身体は、蛇に睨まれた蛙のように身動きがとれない。
 私はただジッと漆黒の瞳と見つめ合う。幾度となく眺めてきた色褪せた瞳が、今日は光りを宿し頭上から私を見下ろしていた。恐怖が足元から全身を舐め、頭の中で警報が鳴る。
 __逃げろ。
 だけど身体が、いうことを聞いてはくれない。
 ____っ!?
 次の瞬間、漆黒の瞳がピカッと光るのと同時に私の視界がぐにゃりと歪んだ。
 滲んでは、色褪せていく世界。地面を踏む足の感覚も、周りの音も消えていく。なのに目の前にある漆黒の瞳だけがハッキリと見えて、怖くなった私はギュッと強く目を閉じた__。