「明日は、飛鳥宮へ行く」

「……え?」

 突然の言葉にハッと顔を上げると皇子は真っ直ぐと前を見据えていた。

「……飛鳥宮? それって」

「斉明大王と中大兄皇子に拝謁(はいえつ)する」

「会うってこと? どうして、いきなり?」

 中大兄皇子は危険な人。 だから皇子は患っているふりをして欺き距離を置いていた。なのに何故、自分からこんな突然会いに行くと決めたのだろうか。

「時が来たのだ」

 落ちた言葉に一瞬息をするのを忘れる。

「……時って」

 皇子がふわりと優しく微笑む。だけど私の胸は
ザワザワと嫌な感覚を覚える。