「……皇子。何か怒ってるよね? 私、怒らせるようなことしちゃったのかな?」

 数秒間の沈黙の後、隣から溜め息が聞こえる。

「……塩谷と話し過ぎなのだ。私は、寝る」

 そう言った皇子は、もう話すつまりはないようだ。

 __嫉妬。
 その言葉が頭を過る。まさか、そんなはず……。早くなる鼓動を誤魔化すように目を閉じる。すると慣れない輿に疲れてしまったのかもしれない。いつの間にか眠っていた私はコロコロとした五月雨さんの声で目を覚ました。