「お疲れ様」

 部屋に入ると、その背中に声をかける。
 ボーッとしていたのか私の声にハッと肩を揺らした。

「ごめん。驚かせちゃった?」

「いや」

 ニッコリと笑った顔を見て何だか安心する。

「ねえ? 大岩さんとは仲良いの?」

「大岩? ……ああ」

 どうやら、省略した呼び名でも通じたようだ。

「あの人。何だか性格が悪そうだけど大丈夫?」

 皇子ってお人好しだから意地悪されていないか心配になる。

「そう、思うか?」

 皇子は否定することなく神妙な顔つきをしていた。

「やっぱり、虐められてるの!?」と、慌てる私に皇子は声を出して笑った。

「案ずるな。私は皇子だぞ? やはり優花殿は愉快だな」

 皇子虐めは恐れ多いか。と、納得する。