私も皆と同じように手を合わせる。
 しかし目は閉じずに、暇潰しの材料を探すべく視線だけは動かしていた。墓碑の横にある大きな苔むした石。あそこには、皇子が詠んだ歌が彫られてあると麻美が言っていたっけ……。
 残念なことに、私には読めないけれど。 麻美は飛鳥時代にとても詳しい。だから飛鳥時代にいた、この皇子についてもよく知っている。
 それは飛鳥時代が好きでこの皇子に興味を持ったのか、それとも皇子が好きで飛鳥時代に興味を持ったのか、私にはわからないけれど。
 だけど平安時代よりも昔の時代なんて古過ぎるし、何とかの皇子なんて教科書にたくさん出てくるし、よくそんな記憶に留めて置けるものだと感心する。
 私なんて右から左へとこの耳を通り過ぎ、名前すら覚えていない。

 __過去は過去、現在(いま)は現在。

 正直、そんな昔の人に興味なんて持てない。