「稀に、ございます」

「そうなんだ。皇子の側近は四人なの?」

 部屋から出る時に挨拶を交わしたけれど、この時代の人の名前は長くて覚えられない。申し訳ないけれど勝手に短縮形で覚えさせてもらった。
 まずは皇子の一番の側近である塩谷(しおや)さんは三十代の少し濃い目のイケメン。その隣にいた塩谷さんと同年代ぐらいの面長で優しい雰囲気の舎人(とねり)さん。そして鋭い目をした大岩(おおいわ)さんと、あまり印象のない境井(さかい)さん。

「以前は、もっといらっしゃったのですが……」と、五月雨さんの顔が曇る。
 中大兄皇子が都を移した時に、ついていってしまったと皇子が言っていた。