「皇子のお母さんは、どうしてるの?」

「母上は父上の後を追うように身罷られた」

 淡々と落とされる言葉に胸が痛む。
 お母さんまで亡くなっていたなんて知らなかった。皇子は本当に一人ぼっちなんだ。
 この時代の親子関係は私にはわからないけれど寂しくないはずがないと思う。

「中大兄皇子は容赦がないのだ。自らの兄を謀反の罪で処刑し自らの后とその父上を讒言(ざんげん)により自害に追い込んだこともある」

「ザンゲン?」

「根拠のない偽りの話しを流すことだ」

 嘘の話しを流し自殺に追い込む。
 ましてや自分の奥さんと、そのお父さんまでも。段々と、皇子の言った恐ろしいという言葉の意味を理解する。