「しかしながら、優花様がいらっしゃってからは皇子様は明るくなられました」

「そ、そう?」

「はい。以前は、ただ一人で景色を眺めておられましたから」

 皇子は侍女達の前では患ったフリをしている。だけど今は私が傍にいるから普通でいられる時間ができた。だけど、その前は?きっと一日中演技をして一人ぼっちであの部屋にいたのだろう。想像すると胸が痛む。

 “__敬われることは寂しい”
 皇子には本音を話せる人がいない。それどころか、ありのままの姿を見せられる相手がいない。
 “__この身に生まれた故”
 それがどれだけ辛いことか、私には理解できるはずがない。