俺と伊月は帰ることにした。池袋から湘南新宿ラインで国府津に向かっている。特別快速の小田原行きだ。所要時間は一時間ちょっとで、時間はかかるのだが、川崎から横浜までの京急との競合区間では最高速度130キロでの高速運転を体感できるのであまり遅く感じない方がいいのだが、上野東京ライン系統の列車でないとそこの区間の走行は出来ないので残念だ。しかも大崎までは埼京線と線路を共用しているのでそこまでスピードは出ない(ただし東海道線比、実は120キロ出せます)。
 しばらくすると武蔵小杉に着いた。ここから先の東海道線に入るまでの区間は横須賀線の線路を走る。しかし、横須賀線で車両トラブルが起き、現在運転見合わせとのことだ。でもこんなの首都圏ではいつものこと。というわけで振り替え輸送を使うことにした。乗るのは、東急東横線のFライナー特急。
 「よぉ!歩夢、元気だったか?」
 「久しぶりだね(まさ)()兄、元気だよ。そっちも元気そうでよかったわ」
 いきなり声をかけてきたのは栗橋(くりはし)将生。将也の父親だ。
 「ん?歩夢、この人誰?私会ったことないよね?」
 「ないと思うよ。というわけで紹介するけど、この人将也のお父さんね」
 「え!?そうなんだ、初めまして、将也君のクラスメイトの松川伊月です」
 「どーも、息子がお世話になってます。にしても歩夢、こんなに可愛い彼女が居たんだな」
 「伊月はそういうんじゃないよ」
 「もーそんなこと言って~」
 「はいはい、それじゃまたね」
 「じゃーなー!」
 「はぁ、何故俺を弄るのが好きなのか…なぁ伊月」
 「…」
 「伊月!?」
 なぜかは分からないが伊月がこの世の終わりが来たんじゃないかと思うような表情をしている。ここにくるまでは、そんな感じじゃなかったのに。え、何?将生兄が原因ですか?それとも俺?どっちにせよ信じたくないけども。
 「あのー、伊月さん…とりあえず帰りましょうかね」