すべてを思い出した翌日は学校があったのだが、何やら学校の創立記念日とやらでその式典が終わったら下校とのことだ。ただ、昨日あんな事を思い出してしまったせいか、校長が話していることが全く頭に入ってこない。まあぼーっとしていると一時間というのはあっという間ですぐ下校になった。そこで俺は、いつものカフェで伊月にすべてを聞くことにした。
「ねぇ、伊月」
「”あれ”ですか?」
「そうだね」
「分かった、全部話すよ。私が知ってること」
「…!」
伊月がただならぬ雰囲気で話し始めたので息をのんだ。
「1995年3月20日、私達は地下鉄サリン事件に出会したんだよ。そしてサリンによって死亡。ここまでは歩夢も思い出したよね?」
「うん」
「さあ、ここからなんだけど…歩夢の前世の名前は『松嶋航大』だよね?」
「なんでそれを…」
「簡単なこと、だって当時は私の高校の先輩だったんだから」
「はい?」
「当時、校内でも有名だったからね。当時の松嶋航大先輩は」
「はぁ、それは分かったけどなんで当時接点のなかった後輩がサリン事件の被害者ってことを俺が思い出したんだ?」
「やっぱり思い出してなかったか…覚えてないの?サリンが撒かれた時に、私にハンカチを渡してくれたこと」
「うーん、あ!確かに渡したよ!斜め前にいた同じ制服の女の子に」
「そう、それが当時の私…『一岡早苗』だね。」
「はぁ、まさかお互いの前世の苗字に今のお互いの苗字の字が入っているとは…というかすごい巡り合わせだな、今ここで俺と伊月が話してるのって」
「そうだよ、これも何かの運命かもね」
「そうだといいけど、それはそうとなんで将也の父親に会ってから対応が素っ気なくなったんだ?」
「まあこれは、超特殊例の私しか気づけないか…あの人サリンの関係者の親戚」
「え?」
「え?とか言われても本当の話しだよ?私、今の伊月になってからサリン関係の人の家系図見まくったんだから」
「つまり伊月は即死ではなかったと」
「そう、死因は覚えてないけど犯人の名前は覚えてる」
「まさか将生兄がそんな奴の親戚だったとは、まあ将生兄は変な奴じゃないからいいけど」
「そうだよ、その確認が取れたから霞ヶ関に行こうって言ったんだよ」
「だよなぁ、そうでもなきゃ霞ヶ関に行く理由がないもんな。最初は最高裁判所にでも行くのかと思ったよ」
「まあそう思われるよね、歩夢には。でも、歩夢って去年の夏休みに霞ヶ関で降りてたよね?」
「ああ、あれか。俺の金持ちの友達の家が永田町にあるから霞ヶ関から乗り換えて行ったんだよね、本当は銀座で降りる予定だったけど」
「え?不正乗車?」
「ライナー料金はどこまで乗っても変わらないけど、乗車料金はずるしたかな」
「そうだったんだ。そこまでして私を助けてくれてありがとう」
「それは全然大丈夫だから。そういえば、伊月っていつから俺が松嶋航大ってことに気づいてたんだ?」
「初めて会った時だよ?THライナーの中で」
「あのとき!?なんでわかったん!?」
「なんでだろうね、何か本能的なやつがこの人だ!って言ってきたんだよ。歩夢が降りてからずっと『なんで君だろうね』って考えてた」
「俺の推しキャラの名台詞出すなー、何期の何話とは言わないけど」
「でも私なら許してくれるでしょ?」
「ま、まあね」
と、簡単に許してしまうぐらいにはもう伊月心をやられてしまっているようだ。もうそんなことわかりきっていたけど。というか、今考えると一目惚れというやつだったのかもしれない。
「ねぇ、歩夢」
「なに?」
「さっき私が『なんで君なんだろうね』って言ったじゃん?」
「言ったね」
「言ったよ」
「何か?」
「もう…きづいてよ」
「え?」
「もしかして歩夢ってとんだ鈍感さん?」
それもはや悪口じゃねえか、と思ったけど黙っておいた。でも、なんで君なんだろうねということは…?
「もしかして伊月、俺のこと…」
「そ、そうだよ。歩夢のこと、歩夢の優しさが大好き。私は歩夢の優しさに何度も救われたよ。歩夢がいなかったらきっと、今の私はなかったと思う」
「俺も、伊月が好き。その綺麗な顔も勿論だけど、伊月の優しい心が好き」
「良かった…歩夢の友達で良かった、歩夢が友達で良かった」
「俺も、伊月が友達で良かった」
「これからは、恋人としてよろしくね?」
「もちろん!」
地下鉄サリン事件…それは日本の鉄道史刻まれた世紀の大事件、そして宗教による同時テロとしてこの先もずっと語り継がれていくだろう。あの事件の後も車内で包丁を振り回したりする不届き者はいる。だが、そのような人がいるのでは日本人のすべての人が安心して公共交通を使えるとは言えない。もちろん鉄道各社も安全対策はしている。それでもあの日の日光線のように爆発物は持ち込まれてしまうのだ。もしそういった人を見かけたら、あの日のように注意をしたり、大人しく逃げたりしてもう二度とあんな死に方をしないようにしよう。今さっきできた、大切な大切な恋人のためにも。
「ねぇ、伊月」
「”あれ”ですか?」
「そうだね」
「分かった、全部話すよ。私が知ってること」
「…!」
伊月がただならぬ雰囲気で話し始めたので息をのんだ。
「1995年3月20日、私達は地下鉄サリン事件に出会したんだよ。そしてサリンによって死亡。ここまでは歩夢も思い出したよね?」
「うん」
「さあ、ここからなんだけど…歩夢の前世の名前は『松嶋航大』だよね?」
「なんでそれを…」
「簡単なこと、だって当時は私の高校の先輩だったんだから」
「はい?」
「当時、校内でも有名だったからね。当時の松嶋航大先輩は」
「はぁ、それは分かったけどなんで当時接点のなかった後輩がサリン事件の被害者ってことを俺が思い出したんだ?」
「やっぱり思い出してなかったか…覚えてないの?サリンが撒かれた時に、私にハンカチを渡してくれたこと」
「うーん、あ!確かに渡したよ!斜め前にいた同じ制服の女の子に」
「そう、それが当時の私…『一岡早苗』だね。」
「はぁ、まさかお互いの前世の苗字に今のお互いの苗字の字が入っているとは…というかすごい巡り合わせだな、今ここで俺と伊月が話してるのって」
「そうだよ、これも何かの運命かもね」
「そうだといいけど、それはそうとなんで将也の父親に会ってから対応が素っ気なくなったんだ?」
「まあこれは、超特殊例の私しか気づけないか…あの人サリンの関係者の親戚」
「え?」
「え?とか言われても本当の話しだよ?私、今の伊月になってからサリン関係の人の家系図見まくったんだから」
「つまり伊月は即死ではなかったと」
「そう、死因は覚えてないけど犯人の名前は覚えてる」
「まさか将生兄がそんな奴の親戚だったとは、まあ将生兄は変な奴じゃないからいいけど」
「そうだよ、その確認が取れたから霞ヶ関に行こうって言ったんだよ」
「だよなぁ、そうでもなきゃ霞ヶ関に行く理由がないもんな。最初は最高裁判所にでも行くのかと思ったよ」
「まあそう思われるよね、歩夢には。でも、歩夢って去年の夏休みに霞ヶ関で降りてたよね?」
「ああ、あれか。俺の金持ちの友達の家が永田町にあるから霞ヶ関から乗り換えて行ったんだよね、本当は銀座で降りる予定だったけど」
「え?不正乗車?」
「ライナー料金はどこまで乗っても変わらないけど、乗車料金はずるしたかな」
「そうだったんだ。そこまでして私を助けてくれてありがとう」
「それは全然大丈夫だから。そういえば、伊月っていつから俺が松嶋航大ってことに気づいてたんだ?」
「初めて会った時だよ?THライナーの中で」
「あのとき!?なんでわかったん!?」
「なんでだろうね、何か本能的なやつがこの人だ!って言ってきたんだよ。歩夢が降りてからずっと『なんで君だろうね』って考えてた」
「俺の推しキャラの名台詞出すなー、何期の何話とは言わないけど」
「でも私なら許してくれるでしょ?」
「ま、まあね」
と、簡単に許してしまうぐらいにはもう伊月心をやられてしまっているようだ。もうそんなことわかりきっていたけど。というか、今考えると一目惚れというやつだったのかもしれない。
「ねぇ、歩夢」
「なに?」
「さっき私が『なんで君なんだろうね』って言ったじゃん?」
「言ったね」
「言ったよ」
「何か?」
「もう…きづいてよ」
「え?」
「もしかして歩夢ってとんだ鈍感さん?」
それもはや悪口じゃねえか、と思ったけど黙っておいた。でも、なんで君なんだろうねということは…?
「もしかして伊月、俺のこと…」
「そ、そうだよ。歩夢のこと、歩夢の優しさが大好き。私は歩夢の優しさに何度も救われたよ。歩夢がいなかったらきっと、今の私はなかったと思う」
「俺も、伊月が好き。その綺麗な顔も勿論だけど、伊月の優しい心が好き」
「良かった…歩夢の友達で良かった、歩夢が友達で良かった」
「俺も、伊月が友達で良かった」
「これからは、恋人としてよろしくね?」
「もちろん!」
地下鉄サリン事件…それは日本の鉄道史刻まれた世紀の大事件、そして宗教による同時テロとしてこの先もずっと語り継がれていくだろう。あの事件の後も車内で包丁を振り回したりする不届き者はいる。だが、そのような人がいるのでは日本人のすべての人が安心して公共交通を使えるとは言えない。もちろん鉄道各社も安全対策はしている。それでもあの日の日光線のように爆発物は持ち込まれてしまうのだ。もしそういった人を見かけたら、あの日のように注意をしたり、大人しく逃げたりしてもう二度とあんな死に方をしないようにしよう。今さっきできた、大切な大切な恋人のためにも。
