予想はしていたけれど。歩夢は、日比谷線に乗っても全く思い出してくれないようだ。”あの”記憶を。私は、とっくに思い出しているのにな。まあいい。ここで思い出されても今日が辛くなるだけだ。本番はこれから。東武日光に着いてからが勝負。
 怪しまれないように日光で観光しますけどね。
 そこで歩夢が思い出さなかったら、もう私と歩夢の遠い遠い過去は、ずっと隠して生きていく。そのほうが歩夢も幸せだろうから。