「お互い秘密ってことで」
そう約束していた志望大学だったけど、
彼女の第一志望を俺は知っていた。
あの日の三者懇談会で耳に挟んだ挙句、
彼女のカバンにストラップがぶら下がっていたことに気づいたからだ。
もちろん、俺が入るにはとてつもなく勉強量を有するほど、
レベルが高いところだった。
だから、俺も頑張った。
彼女の一番になれるように、
そして今度こそ、「ありがとう」と伝えられるように。
卒業式が終わり、親の車でそんなことを思い出していたら、
俺のスマホが鳴った。
合格するようにと、ほぼ願掛けで待ち受けにした大きなつばめのイラストを背景に、
五十嵐からメッセージが表示される。
「晴輝、がんばれ!」
ファイト、と吹き出しのついている生徒会長スタンプに、
思わず顔が綻ぶ。
「そうだな…」
「え、どうしたの?」
俺の声が届いたのか、助手席に座る母が振り返る。
いや、なんでもない…と言おうと思って踏みとどまる。
「これからも、がんばろって思ってさ。」
そっか、優しく笑った母は再び視線を前に戻す。
再会したときにどんな言葉をかけようか、どんな顔でいようか、
思いを馳せていた俺の目の前には、薄紅色に染まる桜並木が広がっていた。
そう約束していた志望大学だったけど、
彼女の第一志望を俺は知っていた。
あの日の三者懇談会で耳に挟んだ挙句、
彼女のカバンにストラップがぶら下がっていたことに気づいたからだ。
もちろん、俺が入るにはとてつもなく勉強量を有するほど、
レベルが高いところだった。
だから、俺も頑張った。
彼女の一番になれるように、
そして今度こそ、「ありがとう」と伝えられるように。
卒業式が終わり、親の車でそんなことを思い出していたら、
俺のスマホが鳴った。
合格するようにと、ほぼ願掛けで待ち受けにした大きなつばめのイラストを背景に、
五十嵐からメッセージが表示される。
「晴輝、がんばれ!」
ファイト、と吹き出しのついている生徒会長スタンプに、
思わず顔が綻ぶ。
「そうだな…」
「え、どうしたの?」
俺の声が届いたのか、助手席に座る母が振り返る。
いや、なんでもない…と言おうと思って踏みとどまる。
「これからも、がんばろって思ってさ。」
そっか、優しく笑った母は再び視線を前に戻す。
再会したときにどんな言葉をかけようか、どんな顔でいようか、
思いを馳せていた俺の目の前には、薄紅色に染まる桜並木が広がっていた。